インバウンド、アウトバウンドともに加速

 4月19日、日本政府観光局(JNTO)は2023年3月の訪日外国人客数が推計値で181万7,500人(推計)だったと発表しました。新型コロナウイルス流行前の2019年同月比では34.2%減だったものの、2022年10月の個人旅行受け入れ再開以降最高を記録したとのことです(2023年1月=149万7,472人、2月=147万5,300人)。

 訪日外客数とは出入国管理統計(法務省)に基づき算出したもので、訪日外客数は外国人入国者から日本を居住国とする外国人を除き算出したもので、2019年には年間3,188万人の訪日外客数を記録しています。

 その後、新型コロナ感染拡大による制限措置などにより、2020年=412万人、2021年=25万人、2022年=383万人と大幅な落ち込みを余儀なくされ、現在は「どれくらい回復するか?」が注視されているのです。

 先行きは水際対策の解除と円安によって、インバウンド(訪日客)がさらに増えることが見込まれています。観光需要のけん引役を期待される中国本土からの旅行客に関しては、4月5日からワクチン3回の接種証明があれば、出国前72時間以内の陰性証明の提示が不要になりました。さらに5月8日には、新型コロナが感染症法上の「5類」に移行することに伴い、現行の水際対策は終了する予定です。

 実は株式市場では統計を待つまでもなく、多くの「インバウンド消費関連株」が動意を見せています。足元、内需消費関連株が目立って活況となっていることも動きを加速させる格好となっています。この市場環境は「10万円株」を選別するにはそれほど望ましいものではありません。

 個別銘柄の株価が上昇することで、これまで3ケタの株価で、10万円以下で投資可能だった銘柄が、4ケタになり枠から外れていくからです。もしこの動きがこれからも続くのであれば、今もまだ1,000円以下=10万円で投資可能な銘柄は貴重な存在になるかもしれません。

 他方、インバウンド消費だけでなく、日本人による海外渡航(アウトバウンド)も増えています。日本政府観光局の発表による出国日本人数は2023年1月=44万3,105人、2月=53万7,705人、3月=69万4,300人で推移しています。ここではまず旅行やホテルに関連する銘柄で、10万円で投資可能な銘柄を挙げることにします。

10万円で投資可能な旅行・ホテル関連株

旅工房(6548・グロース)

 インターネット専業の旅行会社です。現状、日本人の個人海外旅行回復は円安影響で鈍いとしていますが、今期は経常赤字縮小見込みです。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ベルトラ(7048・グロース)

 海外の現地体験型ツアー予約サイト「ベルトラ」運営が主力です。外国人向けハワイ子会社が好調で、今期は経常赤字縮小見込みです。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

京都ホテル(9723・スタンダード)

 京都市中京区の「ホテルオークラ京都」と同下京区の「からすま京都ホテル」を運営しています。3月以降の客室稼働率は9割超とのことです。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ワシントンホテル(4691・スタンダード)

 関東以西が中心の「ワシントンホテルプラザ」と首都圏中心のビジネスホテル「R&Bホテル」を運営しています。客室単価が高水準推移です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

すでにサマーシーズンを想定

 さて、投資家であれば「株式市場の先見性」は認めるところではないでしょうか? 先の動きを予想して投資家が資金を動かす=株式市場において関連する銘柄に動意、の構図です。国内新型コロナ収束後の動きについても、まだ半信半疑が支配的な段階から株価は動き出しています。

 現在は、実際に新型コロナ後の動きが表れているときと認識するのが適当でしょう。一例を挙げると、4月14日段階でJR各社の発表によって今年のゴールデンウイーク期間中の新幹線予約が、新型コロナ禍前と比べて9割以上に戻ってきていることが分かっています。

 指定席の予約数は去年比、東北新幹線で約2.5倍、東海道新幹線で約1.6倍とのことです。この様子が確認できると、株式市場ではGWより先の「サマーシーズンの旅行・レジャー」さらにはシーズンを問わない「外食」、「アパレル」、「エンタテインメント」などに関連する銘柄に関心が広がっていく公算です。

 前述の旅行・ホテル関連株と同様、それほど10万円で投資可能な銘柄が多いわけではありません。2018年3月にスタートした私の連載は今回で終了します。長い間ありがとうございました。

10万円で投資可能な外食・アパレル・エンタメ関連株

 株価データは2023年4月19日終値ベース。

エー・ピーホールディングス(3175・スタンダード)

 都内中心に居酒屋「塚田農場」などを展開しています。1月の既存店売上が前年同月の2倍を超えたことで急騰。2月は約3倍、3月約2.7倍と好調を維持しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

ハブ(3030・プライム)

 首都圏中心に英国風パブ「HUB」などを展開しています。大規模スポーツイベントのたびに来店数増加が話題になる銘柄です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

デリカフーズホールディングス(3392・スタンダード)

 ファミレスなど外食向けカット野菜、生鮮ホール野菜が主力です。カット野菜が想定超となり、足元、株価は急伸しています。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

オンワードホールディングス(8016・プライム)

 アパレルメーカー大手で、「23区」、「組曲」など中高価格帯ブランドを百貨店向け中心に展開しています。足元、アパレル株は全般堅調推移です。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)

三精テクノロジーズ(6357・スタンダード)

 舞台設備、遊戯機械の大手企業です。テーマパーク、劇場など大規模舞台設備を得意としています。イベント再開は追い風となります。

・1年日足チャート

赤:出来高移動平均(5日)
青:出来高移動平均(25日)
緑:出来高移動平均(75日)