ドル/円の110円超はあっても短命

 米景気サイクル終盤は、低金利、積極財政、米中合意演出にサポートされて、2020年を通じてある程度永らえるというのが、目下のメイン・シナリオです。しかしこのサポートが順当に効果を発揮し、景気と株価がしっかり推移すれば、インフレ率がじわりと高まり、利上げ観測が再浮上することで、まずは株価、次いで景気に下方リスクを顕在化させる恐れがあります。

 もちろんそれより先に、既に景気分岐点を割り込んでいる米企業景況感の回復が不調だったり、米中交渉でのトランプ政権の「ちゃぶ台返し」があったりと、株価が失望的に反応するリスクも警戒されます。中国経済の悪化が景気対策にもかかわらず止まらないというリスクも2020年を通じて注視していく必要があるでしょう。2020年3月の米大統領選挙に向けて多くの州で予備選挙・党員集会が行われるスーパー・チューズデー辺りから、トランプ大統領の再選か、民主党の左派候補浮上か、民主党右派でバイデン氏あるいは別の候補者の浮上かで、市場は政策見通しが定まらず、揺れ動くかもしれません。

 ドル/円相場は、米国の景気と株価の堅調が続く間は、105~110円レンジから上値を試す場面もあるでしょう。しかし、多くの投資家は腰を据えて110円以上のドル買いポジションを買い増すことには慎重でしょう。米国の強い指標で長期金利が上昇する初期には、投機筋主導で110円以上を目指す展開にも違和感はありませんが、株価の反落などささいなきっかけでドル買いポジションは巻き戻されやすいと見ています。

 米景気サイクルは終盤で拡大余地が限られること、そこを無理して拡大しようとすれば金利上昇のしっぺ返しが意外と早そうなこと、ひょっとしたら米国か中国の景気が自然とダレるリスクもあること、そして米大統領選挙後には再び米中摩擦の悪化が見込まれること、以上の想定から、2021年まで視野を広げると、ドル/円は100円方向に向かう可能性が高いとの判断を維持しています。