日経平均の戻りが鈍い中、NYダウが早々と史上最高値を更新しているのはなぜか?

これには、4つの理由があると、考えています。

【1】貿易戦争のダメージが製造業に集中
 日本と中国は、ともに製造業王国です。産業構造を見ると製造業の比率が高く、貿易戦争のダメージを受けやすい構造です。
 米国も製造業だけ見ると、業況悪化が顕著です。ところが、米国では早くから製造業の空洞化が進んでいます。既に製造業への依存は小さくなっています。代わって、IT、ヘルスケア、金融など、非製造業の構成比が高くなっています。経済構造の違いゆえ、貿易戦争のダメージは日中に重く、米国には比較的軽くなっています。

【2】IT大手の力の差が歴然、米企業が世界のITインフラを支配
 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトなど世界のITインフラを支配する米IT大手が高収益を稼ぐ中、日本のIT大手の業績は冴えません。米IT大手が世界のITインフラを支配して稼いでいるのに対し、日本のIT大手は世界標準を取ることができず、狭い日本で過当競争に陥り、収益が悪化している例が増えています。
 中国には、アリババ、テンセント、バイドゥなど、中国市場を支配して巨大化したIT大手があります。中国政府が米IT大手の参入を拒絶したおかげで、中国のIT大手が中国市場を独占的に支配して成長してきました。ただし、米IT大手のように、世界のインフラを支配する力はありません。

 近年、ITを使ったサービスが世界中に広がり、ネットがリアルを代替する流れが加速しています。こうした環境下、IT産業の力の差が、米国と日本、中国の株価パフォーマンスの差につながっています。

【3】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい
 米国はかつて、世界最大の原油輸入国でした。ところが、シェール・オイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となり、原油を輸出するようになりました。かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェール・オイル、シェール・ガスを産出するようになった効果はとても大きく、米国経済の競争力を高めました。その恩恵が、今も続いています。この大きな変化を、シェール・オイル&ガス革命と呼びます。

【4】米国は移民によって人口が増加
 トランプ大統領が移民流入を阻む政策をとりつつありますが、それでも過去に受け入れた移民が米経済の有効需要拡大に貢献する流れは変わっていません。移民は当初、低賃金労働者として米経済を支え、ある程度貯蓄ができると、住宅や家庭要因を買う購買力となり、米経済の成長を支えてきました。