日経平均は外国人買いで堅調

 先週の日経平均株価は1週間で88円下落し、2万3,303円となりました。利益確定売りで14日には一時2万3,062円まで売られましたが、NYダウの上昇が続いたことから持ち直しました。世界株高が進む中、10月以降、日本株に外国人の買いが続いています。

 先週のNYダウは最高値更新が続き、2万8,004ドルまで上昇しました。金利低下に加え、米中貿易戦争が一時休戦となる期待、来年にかけて5G(第5世代移動体通信)・半導体への投資が盛り上がる期待などが、株価上昇を牽引しています。

日経平均株価週足:2018年初~2019年11月15日

NYダウ週足:2018年初~2019年11月15日

 簡単に、2018年以降の日経平均の動きを振り返ります。

【1】2018年1~9月:世界中が好景気
 好景気でも米金利上昇・米中貿易戦争への不安で、日経平均は上値重い。

【2】2018年10~12月:世界景気悪化
 米中貿易戦争の影響で世界景気が悪化。世界株安を受け、日経平均も急落。

【3】2019年1~11月:米中対立緩和の期待
 米中対立が緩和する期待から、世界的に株が反発し、日経平均も反発しつつあります。世界のハイテク投資を抑圧している米中貿易戦争が緩和すれば、AI(人工知能)・IoT(モノのインターネット化)・5G(第5世代移動体通信)・半導体の投資が世界的に盛り上がり、2020年4月ころから世界景気は回復に向かうと私は予想しています。今の株高は、2020年の景気回復を織り込む、最初の動きと考えています。

 簡単に、2018年以降のNYダウの動きも振り返ります。2018年中は、日経平均とほぼ同じ動きですが、2019年の上昇が日経平均とは大きく異なります。

【1】2018年1~9月:世界中が好景気
 好景気でも米金利上昇・米中貿易戦争への不安で、NYダウは上値重い。

【2】2018年10~12月:世界景気悪化
 米中貿易戦争の影響で世界景気が悪化。NYダウ急落。12月に、2018年に入って4回目の米利上げが実施されたことも逆風。

【3】2019年1~11月:米中対立緩和の期待
 FRB(米連邦準備制度理事会)が8・9・10月と3回利下げを行ったこと、米景気はやや減速するも堅調を維持していること、米中貿易戦争が緩和に向かう期待があることが追い風となっています。NYダウは急反発し、史上最高値を更新しました。

日経平均の戻りが鈍い中、NYダウが早々と史上最高値を更新しているのはなぜか?

これには、4つの理由があると、考えています。

【1】貿易戦争のダメージが製造業に集中
 日本と中国は、ともに製造業王国です。産業構造を見ると製造業の比率が高く、貿易戦争のダメージを受けやすい構造です。
 米国も製造業だけ見ると、業況悪化が顕著です。ところが、米国では早くから製造業の空洞化が進んでいます。既に製造業への依存は小さくなっています。代わって、IT、ヘルスケア、金融など、非製造業の構成比が高くなっています。経済構造の違いゆえ、貿易戦争のダメージは日中に重く、米国には比較的軽くなっています。

【2】IT大手の力の差が歴然、米企業が世界のITインフラを支配
 グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトなど世界のITインフラを支配する米IT大手が高収益を稼ぐ中、日本のIT大手の業績は冴えません。米IT大手が世界のITインフラを支配して稼いでいるのに対し、日本のIT大手は世界標準を取ることができず、狭い日本で過当競争に陥り、収益が悪化している例が増えています。
 中国には、アリババ、テンセント、バイドゥなど、中国市場を支配して巨大化したIT大手があります。中国政府が米IT大手の参入を拒絶したおかげで、中国のIT大手が中国市場を独占的に支配して成長してきました。ただし、米IT大手のように、世界のインフラを支配する力はありません。

 近年、ITを使ったサービスが世界中に広がり、ネットがリアルを代替する流れが加速しています。こうした環境下、IT産業の力の差が、米国と日本、中国の株価パフォーマンスの差につながっています。

【3】シェール・オイル&ガス革命の恩恵が米国に大きい
 米国はかつて、世界最大の原油輸入国でした。ところが、シェール・オイルの増産が続き、2018年には世界最大の産油国となり、原油を輸出するようになりました。かつて採掘することができなかったシェール層から大量のシェール・オイル、シェール・ガスを産出するようになった効果はとても大きく、米国経済の競争力を高めました。その恩恵が、今も続いています。この大きな変化を、シェール・オイル&ガス革命と呼びます。

【4】米国は移民によって人口が増加
 トランプ大統領が移民流入を阻む政策をとりつつありますが、それでも過去に受け入れた移民が米経済の有効需要拡大に貢献する流れは変わっていません。移民は当初、低賃金労働者として米経済を支え、ある程度貯蓄ができると、住宅や家庭要因を買う購買力となり、米経済の成長を支えてきました。

日本株「買い場」の判断を維持

 日本株は配当利回りや買収価値から評価して「割安」と考えています。また、来年4月ころ世界景気の回復を予想しています。世界景気の回復初期には、日本株が米国株よりも上昇率が高くなる時期があると考えています。日本株は買い場の判断を維持します。

 

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