東京市場の株高をリードしているセクターを知る

 上述した投資環境の好転を受け、10月以降の東京市場で株高をリードしているセクター(業種)にも特徴がみられます。世界の機関投資家がベンチマークとして使用することが多いMSCI日本株価指数と11大分類業種株価指数の月初来騰落率を比較すると、市場平均(+4.8%)を上回っているセクターとしては、ヘルスケア(+7.8%)、素材(+6.4%)、情報技術(+5.9%)、資本財・サービス(+5.6%)の4業種だけとなっています(図表4)。

 ヘルスケアは、エーザイが米バイオジェンと提携してアルツハイマー病を対象とした新薬承認申請予定を公表し株価が急騰。薬品・バイオ株の連れ高効果が大きいと言えます。一方、情報技術(IT)の堅調は、半導体・半導体製造装置を含む電気機器の株高が追い風となっています。

 SIA(米半導体工業会)によると、IoT(すべてのものがインターネットで繋がる)、AI(人工知能)、5G関連の需要拡大を背景に世界の半導体需要見通しは徐々に明るくなっています。そして、素材や資本財・サービスなどの景気敏感株は、世界景気の底打ちに伴う外需回復期待を織り込みつつあります。

 換言すると、米国を中心とする世界株式が「ソフトランディング(景気や業績が軟着陸する)」を前提にした物色が続くなら、広義のシクリカル(電気機器、精密機器、機械、輸送用機器、鉄鋼、非鉄金属、海運、総合商社、銀行などを含む景気敏感株)がセクター物色の中核を担う可能性があり、注目したいと思います。

 なお、日本銀行は10月31日の日銀金融政策決定会合で金融政策の変更に至りませんでした。日米市場で株高が続いていることと為替相場が比較的安定していることで、「将来に向けカードを温存した」との見方もあります。

 国内で超低金利環境が続くと見込まれるなか、株式市場は予想PER面でいまだ割安感がみてとれます。決算発表の一巡で「業績はこれ以上悪くならない」との認識が広まるなら、株式が上値余地を探る可能性は高いと考えられます。

図表4:日本株式のセクター別動向(月初来騰落率の降順)

*予想PERはMSCI日本株価指数をベースにしたBloomberg集計による市場予想平均
出所:Bloombergのデータをもとに楽天証券経済研究所作成(2019年10月30日)

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