4.注目銘柄:日本電気
大手ITサービス会社。前期に構造改革を実施
日本電気は、大手ITサービス会社であり、大手通信機器・コンピュータメーカーでもあります。前期2019年3月期までの数年間業績は低水準でしたが、前期に500億円の構造改革(内訳は資産クリーンアップ120億円、将来収益改善のための投資30億円、構造改革費用350億円)を行いました。このため、前期は営業減益となりましたが、今期はこの一時費用がなくなること、構造改革の効果255億円が期待できることから、業績回復が見込まれます。
実際には、2020年3月期1Q(2019年4-6月期)は、売上高6,538億5,500万円(前年比6.7%増)、営業利益54億1,700万円(前1Qは107億円の赤字)と順調でした。会社側によれば、今1Q営業利益は会社予想より約50億円上振れしました。パブリック(公共向け情報システムなど)、エンタープライズ(企業向け情報システムなど)、ネットワークサービス(通信向け)、システムプラットフォーム(サーバ/ストレージ、パソコン、ネットワーク製品など)、グローバル(海外)、その他のうち、その他を除く全セグメントの業績が改善しました。
会社側は今2Q以降を保守的に見ていますが、今期会社予想業績(営業利益1,100億円、前年比88.1%増)は上方修正の余地がありそうです。
ネットワークサービスの成長に期待
前述したように、来期2021年3月期以降、5G基地局ビジネスが急速に立ち上がる見込みです。大手基地局メーカーである日本電気にも恩恵が大きいと予想されます。また、5Gに向けたバックボーン増強や、中長期的にはパブリック、エンタープライズも含めた5G応用システムの構築などへの展開が期待できます。
AI顔認証技術では世界トップの評価を受ける
日本電気はAI(人工知能)の情報システムへの応用を早くから行ってきましたが、特にAIを使った顔認証技術では世界最高の評価を受けています。今年10月には、米国国立標準技術研究所より顔認証技術のベンチマークテストにおいて世界第1位の評価を獲得しましたが、1位はこれで5回目です。1,200万人分の静止画の認証エラー率0.5%という高性能が評価されました。
日本電気のAI顔認証システムは、現在までにコンサートの入場者管理(2014年から「ももいろクローバーZ」「宇多田ヒカル」などのライブに導入された)に採用されており、空港のゲート管理(2020年に成田空港などで開始)、2020年東京オリンピック・パラリンピックの大会関係者の入退場チェックなどへの導入が決まっています。AI顔認証システムの年間売上高はハードウェアを入れて推定数十億円とまだ小さいですが、日本電気の情報システムの競争力として重要なものになっています。
また、AIの医療への応用(特に、創薬への応用)を進めています。
中長期で投資妙味を感じる
業績は順調で、今期会社予想営業利益は1,100億円(前年比88.1%増)、来期楽天証券予想営業利益は1,350億円(同22.7%増)です。今後6~12カ月間の目標株価を5,800円とします。2021年3月期楽天証券予想EPS308.0円に想定PER20倍弱を当てはめました。中長期での投資妙味を感じます。
表3 日本電気の業績
表4 日本電気のセグメント別業績
本レポートに掲載した銘柄:日本電気(6701)