iDeCoに入れない会社員は会社のせい?

 まず、現状で「iDeCoに加入できない」というのは、原則「企業型DC(確定拠出年金)に加入している」と考えてください。

 DCの口座は税制優遇があるため、無制限にいくつも持つことはできません(NISA[ニーサ:少額投資非課税制度]も同じ考えに基づくため、一人1口座しか開設できない)。原則として国民一人1口座であることが求められます。そのため、企業型DCに加入している人は原則、iDeCoに加入できないこととなっています。

 ただし法律上は「企業型確定拠出年金規約で定めた場合は、iDeCoに同時加入可」としているのがくせ者です。一見すると、iDeCoに入れないのは会社が対応してくれないからであるように思えます。

 しかし、iDeCoに加入できる企業型確定拠出年金制度にするためには、「マッチング拠出を行わないこと」と「会社が負担する積み立て額の上限を引き下げること」の2つを条件としています。ちなみに「マッチング拠出」とは、企業型DCで会社が拠出する掛金に加えて、加入者本人が掛金を上乗せして拠出することができる仕組みのことです。

 二つの条件を具体的にすると、月5万5,000円の拠出限度額について、会社負担額を3万5,000円に引き下げることで、iDeCo月2万円の枠が生じるのです(確定給付企業年金等併用の場合、月2万7,500円の拠出限度額につき、会社負担を1万5,500円に下げることになる)。

 これでは、下手をすると会社が負担してくれる額と、退職金額が減ってしまうだけになってしまいます。会社も退職金の計画的な積み立てが難しくなります(一般に、給与や職階に比例して掛金額を増額するため、上限は高いほど退職金水準を高くしやすい)。

 結果として、iDeCoと企業型DCに同時加入できるのは、規約ベースで1%以下と言われています(正確な統計は公表されていない)。企業型DCの加入者である会社員の数は716.4万人(2019年6月末現在、※)ですから、「1%以下」を当てはめると概算でも10万人以下、ということになるわけです。

 それ以外、つまり700万人くらいはiDeCoに入れなかった、ということになり、けっこう多くの人が「iDeCoには入れない人」だったということが分かります。

※企業型DC加入者数は厚生労働省資料を参照