運用成果が大きく動くのは「非常事態モード」のとき

 2008年のリーマン・ショックの経験。株式投資を10年以上続けている方であれば、リーマン・ショックの恐怖は、言葉では伝えきれない出来事であったかが分かると思います。

 ところが、2013年以降の、いわゆるアベノミクス上昇相場になってから株式投資を始めた方は、リーマン・ショック級の株価下落が起きた時、自分の財産がどれほど毀損する恐れがあるか、あまりピンとこないと思います。

 リーマン・ショック級の株価下落が来るかもしれないなど考えたことがない方も多いのではないでしょうか。言い方は悪いですが、非常事態モードを経験していない方の中には、株式投資を少し甘く見ているのではないかと思わざるを得ない投資スタイルを持っている人も少なくありません。その最たる例が、株価が下落しても我慢して持ち続けているケースです。

 実は株式投資の運用成果は、非常事態モードの時に大きく変動するといっても過言ではありません。いくら平常モードをうまく乗り切ったとしても、非常事態モードになったときに大きな損失を被ってしまっては元も子もないのです。

 実際、2008年のリーマン・ショックでは、多くの個人投資家が壊滅的なダメージを受けてしまいました。レバレッジをかけていたならば、一瞬にして全財産を失った人も数多くいます。恥ずかしながら筆者も、自身に課している守るべきルールを守らなかったがために、大きな損失を被ったのです。

将来の株価を予想するのはハイリスク!

 ある専門家は、日経平均株価が近々3万円に達するとして、その根拠を示しながら見解を述べています。

 一方、筆者が先日のコラムで示した通り、日経平均株価はバブル崩壊後の30年の間に3回、高値から60%以上の下落をしています。今回の高値(2018年10月)から60%下落すると、日経平均株価は1万円を割り込む計算となります。

 このように、日経平均株価の動き1つとっても、全く異なる予想が導かれます。個人投資家の皆さんとしては、「いったいどうすればよいの?」と戸惑ってしまうかもしれません。

 では、日経平均株価が3万円に達するという予想を信じればよいのでしょうか? それとも1万円まで下がる可能性を重視すべきなのでしょうか?

 筆者はそのどちらの考え方も非常にリスクが高いと思います。日経平均株価が3万円に達すると予想したものの逆に1万円にまで下落したら、大きな損失を被る可能性が高いです。日経平均株価1万円割れを警戒したものの逆に3万円に達したならば、利益を得る機会を失うことになるからです。

個人投資家が取るべき現実的な対応方法とは?

 筆者は「株価が上方向、下方向、どちらに動いても対応できる」方法を実行すべきと思っています。

 そのためには、株価のトレンドに逆らわずについていくことがとても重要です。もし日経平均株価が3万円を目指すならば、株価は上昇トレンドを描くはずです。そうなれば買いで対応すればよいのです。

 逆に日経平均株価が1万円を目指して下落していくならば、株価は下降トレンドを描きます。そうなれば、株価はさらに下落する可能性が高いので保有株は売却してキャッシュ比率を高めておくようにします。

 個人的には株式マーケットはバブルであると思っていますが、バブルがさらに延命される可能性も否定できません。したがって、株価がどう動くかを予想したり、将来の株価を決めつけるのではなく、臨機応変に株価の実際の動きに沿った行動を心掛けるようにしましょう。それが大きな失敗から自身の財産を守ることにつながります。