教育資金一括贈与の非課税制度

 相続財産を減らす別の方法として、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度があります。

 これは、高齢者が保有する財産を若年世代に移転させるとともに、教育・人材育成をサポートするため、子や孫に対する教育資金の一括贈与に係る贈与税について、子・孫1人につき1,500万円までを非課税とする制度です。

 これを適用するためには、祖父母(直系尊属、贈与者)が、子・孫(30歳未満の直系卑属、受贈者)名義の日座等を金融機関に開設し、教育資金を一括して拠出します。この資金について、子・孫1人につき1,500万円までが非課税となるのです。

 教育資金の範囲は、学校などへの入学金や授業料、学校以外の塾や習い事の月謝等であり、学校以外に支払われるものについては500万円が限度となります。教育資金の使途の適格性については、金融機関が領収書等をチェックし、書類を保管します。

 この制度は、子・孫が30歳に達する日に期限が到来するため、その時点で使い残しや教育資金以外の支払いに充てられた資金があれば、贈与税が課されることになります。

[図表3]教育資金の一括贈与の非課税措置の仕組み(例)

出所:岸田康雄「相続生前対策パーフェクトガイド」中央経済社
出所:岸田康雄「相続生前対策パーフェクトガイド」中央経済社

 

結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度

 2019年3月31日までの間に、20歳以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金に充てるため、直系尊属(父母や祖父母など)から、(1)信託受益権を付与された場合、(2)贈与により取得した金銭を銀行等に預け入れした場合、または(3)贈与により取得した金銭等によって有価証券を購入した場合には、1,000万円(結婚は300万円)までの金額については、贈与税が非課税となります。

 結婚・子育て資金口座からの払出しおよび支払いを行った場合には、その開設時に選択した払出方法に応じ、領収書などの書類を、次の(1)または(2)の提出期限までにその金融機関等に提出する必要があります。すなわち、(1)結婚・子育て資金を支払った後にその金額を回座から払い出す方法を選択した場合は、支払日から1年を経過する日、(2)それ以外の方法を選択した場合は、支払日の属する年の翌年3月15日です。

 契約期間中に贈与者が死亡した場合には、死亡日における非課税拠出額からそれまでの支出額を控除した残額を、贈与者から相続等により取得したこととされます。

 その後、受贈者が50歳に達することなどにより、結婚・子育て口座に係る契約が終了した場合、非課税拠出額からそれまでの支出額を控除した残額があるときは、その残額はその契約終了時に贈与があったこととされます。

【結婚・子育て資金の具体例】

(1)結婚に際して支払う金銭(300万円限度)

●挙式費用、衣装代等の婚礼・結婚披露費用(婚姻日の1年前の日以後)

●家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内)

(2)妊娠,出産および育児に要する金銭

●不妊治療・妊婦健診に要する費用

●分べん費等・産後ケアに要する費用

●子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)

[図表4]結婚・子育て資金一括贈与の非課税制度のイメージ

出所:岸田康雄「相続生前対策パーフェクトガイド」中央経済社

岸田康雄
島津会計税理士法人東京事務所長
事業承継コンサルティング株式会社代表取締役 国際公認投資アナリスト/公認会計士/税理士/中小企業診断士/一級ファイナンシャル・プランニング技能士

※この記事は2019年1月8日に幻冬舎ゴールドオンラインサイトで公開されたものです。

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