年収が高いほど生活が楽になると思う人は多いと思いますが、給与収入が850万円を超える場合、注意が必要です。

 年収850万円を超えるのは概ね1割程度。

 他人から見ると羨ましく見える収入レベルではありますが思わぬ落とし穴も。

 今回は年収850万円の壁について解説します。

1つめの壁。2020年から増税に

 給与収入を有する人は、給与収入金額から給与所得控除額というみなし経費を差し引いた金額が所得税、住民税の計算の基となる所得金額となります。

 平成30年現在、給与収入が1,000万円を超える場合、最高220万円の給与所得控除額を差し引くことができます。 

 この給与所得控除額が、2020年から給与所得控除額が一律10万円引き下げとなり、さらに給与収入850万円を超える場合の給与所得控除額は195万円となります。

 850万円を超える収入を有していても、23歳未満の扶養親族を有する世帯や特別障害者がいる世帯場合には現行と同程度の税負担となります(詳細は割愛)が、それ以外の独身世帯、DINKS世帯、子育て終了世帯等は増税となります。なお、個人住民税は2021年度からの増税となります。

2つめの壁。老後の年金「加給年金、振替加算」

 生計を維持する配偶者や子の年収が850万円以上である場合、年金が加算されなかったり、支給されない場合があります。

 例えば、老齢厚生年金の配偶者加給年金。

 厚生年金に20年以上加入する者が老齢厚生年金を受給する場合、自身の老齢厚生年金の支給開始から配偶者が65歳に達するまで、年間約39万円の加給年金が支給されますが、配偶者の年収が850万円以上である場合、加給年金は支給されません。

 なお、年収は前年(前年分が確定していない場合は前々年)で判断されます。

 近い将来(おおむね5年以内)に定年退職等で年収が850万円未満となることが確実とされる場合には支給される可能性もありますが、加給年金の対象となる者(例:妻)にある程度の給与収入がある場合には支給されない可能性があります。

 なお、加給年金の対象となる昭和41年4月1日以前生まれの配偶者には振替加算が支給されますが、振替加算にも850万円基準が適用されます。