公的年金には「離婚後に手続きをすることによって、年金の多い相手方から年金の一部を分けてもらい、自分の年金を増やすことができる」という制度があります。

 この制度を「離婚時の年金分割」といい、短くして「離婚分割」と呼んだりしています。

 離婚分割は複雑な制度なので、今回はざっくりしたイメージでお伝えしようと思います。

離婚することで、相手方の年金の一部をもらうこともできる

「皆様、どうもこんにちは。社会保険労務士の浜田です。そして、こちらはツッコミ担当のマネ田ラボ子さんです」

「どうも、ラボ子です~。ってなんでやねん!」

 パンッ!

「いだぁ! いきなり頭を叩かないでくださいよ。ツッコミと言ってもそっちじゃないですよ。年金の話にツッコミを入れるんですよ」

「あらそう? どうせそんなことだろうと思ったわよ。ちなみに、最近お客さんから何か言われたことがあるそうじゃない」

「全然ちなんでないですけど…実はそうなんです。『離婚すると年金が分割できるなんて知りませんでした』と言われたんです。離婚時の年金分割、いわゆる離婚分割はあまり有名じゃないのかな? と思ってしまいました」

「私もよく知らないわ。それじゃあ、解説をお願い」

「はい、分かりました。ざっくり言うと、離婚分割とは『婚姻期間中の厚生年金(共済年金を含む)の標準報酬を請求により分割する』というものです」

「うわぁ…もう全然分からないわ」

「ですよね~。それでは小分けにしてお話していきますね」

年金の多い方から少ない方へ分け与える

「離婚分割の制度は複雑なので、ここからはざっくりとしたイメージでお伝えします。また、細かい例外もあるのですが、今回はそれも省略しています」

「おおっ! ラボ子さん、的確なツッコミどうもありがとうございます。さて、離婚分割のイメージを簡単にお伝えすると『年金の多い方から少ない方へ分け与える』ということです。一般的には元夫の方が年金は多いでしょうから、元夫から元妻へ年金を分け与える、という感じになります」

「なるほど。じゃあ元夫からガッポリもらわないとね!」

「残念ながらガッポリとはなりません。按分割合は最大で50%と法律で決まっているからです」

「言葉が難しいけど、元夫の年金全部の50%ということよね?」

「いいえ、違います。元夫の年金全部の50%ではありません。分割対象は『婚姻期間中の厚生年金(共済年金含む)』です。以下に長年連れ添った夫婦で、按分割合を50%とした場合のイメージ図を載せておきます」

離婚前と離婚後の受給できる年金総額のイメージ図

※妻は専業主婦の期間が長かったものとする
※グラフはあくまでもイメージです

「ちょっとアンタ! 年金は半分ずつになっていないじゃない。グラフが間違ってるんじゃないの?」

 そう言って、ラボ子さんは筆者のネクタイを引っ張りました。

「ぐえぇ。ちょっと落ち着いてください。グラフは年金『総額』とありますでしょ?つまり、もとからある妻の年金+分割して分けてもらった年金の合計、という感じにしているのです」

「離婚分割してもあまり年金が増えていない感じがするんですけど…」

「実はそうなんです! 『離婚分割をしても期待したほど年金は増えない』と思っておいた方がよいでしょう。実務でも『こんな少ない金額じゃ生活できない』と言われてしまうことも多いです」

「世の中そんなに甘くないのね」