【原油相場】一大変動要因“OPECプラスの減産”の延長決定

 7月1日、2日、ウィーンの本部でOPEC総会が開催されました。6月30日で終了したOPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)の原油の「減産」の今後の方針を決定する重要な会合でした。

 この「減産」とは、OPECと、減産実施に賛同する非OPEC諸国があらかじめ合意した削減量・削減期間に基づき、減産参加国の自主性によって行われる、「原油の生産量を削減する行為」です。OPECは、消費量の予測を含んだ諸情勢に応じて、世界の石油の供給量を調整する役割を担っていると言われています。

 このOPECが行う減産(増産を行う場合もあり)の目的の一つに、世界の石油過剰在庫の削減があります。また、減産は世界の石油の需給バランスを引き締める場合があるため、原油価格を上昇させる要因になることもあります。

 以下は、「7月1日以降も減産を継続するか」を決定する重要な会合となった、第15回共同減産監視委員会、第176回OPEC総会、第6回OPEC・非OPEC閣僚会議の主な決定事項です。今回の場合、これら3つの会合を総称しOPEC総会と呼ばれました。

■今回のOPEC総会の決定事項

・6月末で期限が切れた減産を2020年3月末まで9カ月間延長
・削減幅は現行のルールを踏襲
 OPEC、非OPECともに2018年12月の総会で決定した“原則2018年10月比、
 日量合計およそ120万バレル削減”を踏襲
 サウジなどOPEC11カ国(減産参加国)の削減幅は日量81万2,000バレル
 ロシアなど非OPEC10カ国の削減幅は日量38万3,000バレル
・OPEC・非OPEC閣僚会議でOPECと減産に参加する非OPECの協力宣言を
 コミットする憲章の草案を承認
・次回のOPEC定時総会は今年12月5日(木)、OPEC・非OPEC閣僚会議は
 今年12月6日(金)に開催(場所は同じウィーンのOPEC事務局)
 

 これらの内容などから考えられる、今回の一連の会合が与える原油相場への影響については以下のとおりです。

■ 上昇要因と見られる点

・延期になったものの、無事、総会が行われた
・OPEC、非OPECともに減産延長で合意した
・延長後の終了時期が一部の予想を超える来年3月末までとなった
・ロシアを含む枠組み「OPECプラス」を強固なものにする意思が示された

■ 下落要因と見られる点

・削減幅が強化されなかった
・協議の難航を示唆する出来事が起きた

 また、下落要因に挙げた2点については以下のように考えています。

 削減幅が強化されなかったことについては、個別国の削減幅の拡大、減産免除国を減産参加国にする変更、OPEC加盟国の追加など、削減量を増やす施策が示されず、「期間延長だけでは力不足。サプライズなし」と捉えられ、下落要因となったとみられます。

 OPEC総会後の記者会見が予定時刻を4時間半以上が経過して始まったことで、「合意事項の協議が難航したのではないか」と推測され、組織内に不安定さがあるとの見方が広がったことが、下落要因となったとみられます。

 図:OPEC総会直前直後の値動き 

単位:ドル/バレル 出所:CMEのデータをもとに筆者作成

 足元、米中貿易戦争という大きな下落材料がありますが、筆者はOPECプラスの会合もまた、下落の一因になっていると考えています。