【4】吉野家HD
吉野家HDは、前期(2019年2月期)の最終利益が上場来初の赤字でした。今期(2020年2月期)の利益回復も鈍く、当面、厳しい業績が続く見込みです。ただし、長期的に利益回復を見込むので、優待投資の対象として、長期投資していく価値があると判断しています。
「優待投資でも、株式投資である以上、業績は見て投資しましょう」と最初に申し上げました。ただし、それは「業績好調の会社だけ買い、業績不振の会社は避けましょう」と言っているわけでは、決してありません。どんな企業も長い年月のうちには、良くなったり悪くなったりします。業績が低迷している時は株価が安くなっているので、もし将来利益回復が見込まれるならば、安く買う好機かもしれません。吉野屋HDは、中長期的に利益回復を期待するので、投資していって良いと判断しています。
吉野家HDの前期最終損益は、赤字でした。原材料(米国からの輸入牛肉)価格高騰や、人件費上昇が、逆風でした。ただし、長い目で見ると、利益回復の可能性が高いと考えています。生活に根付いた外食に対する需要は消えることがないからです。効率的なオペレーションでコスト競争力のある吉野家は、メニューの多角化や、海外展開で利益を回復させる余地があると思います。
新興国でも牛肉の消費が拡大し、輸入牛肉のコストが上昇していることが利益を圧迫しています。将来、牛肉の輸入コストは低下すると期待しています。近い将来、あるいは遠い将来、米国からの輸入牛肉にかかる関税が下がる期待があるからです。現在、米国からの牛肉には、38.5%の高い輸入関税がかけられています。TPPに米国が加われば、それが、年々引き下げられていくはずでした。ところが、米国がTPPに加わらず、米国抜きのTPP11が発効しました。
TPP11の発効により、カナダ・オーストラリア産の牛肉の輸入関税は、下がっています。そのため、米国産牛肉は、競争上、不利になっています。したがって、日本で参議院選挙が終われば、トランプ米大統領は当然、日本との通商交渉で、日本が輸入する米国産牛肉の関税を下げていくように、圧力を強めるはずです。この交渉がどう進むか、現時点で予測できませんが、関税が下がれば、吉野家にメリットとなります。
【5】 ビックカメラ(3048)
ビックカメラは、家電量販店の勝ち組として成長が続くと期待しています。業績不振の同業ヤマダ電機と明暗が分かれています。
明暗を分けたのは、2つの経営戦略の違いです。第一に、出店戦略の違いです。ヤマダ電機は、郊外に大量出店したのが裏目に出て、郊外店が不振です。ビックカメラは都市部に大型店を出していったことが成功し、インバウンド需要獲得でも優位です。
次に、多角化戦略でも差が出ました。ヤマダ電機は多角化で始めた住宅事業が業績の足を引っ張っています。ビックカメラは、家電から、幅広い生活雑貨のプライベートブランドを展開した戦略が成功し、業績拡大が続いています。
ビックカメラは、今期(2019年8月期)は営業最高益を見込んでいます。上半期(2018年9月-2019年2月)までの営業利益が前年同期比▲5%の減益でしたので、通期での最高益更新のハードルは高くなりましたが、それでも今期は挽回も可能と考えています。
問題は、来期(2020年8月期)です。家電などの耐久消費財の販売は、10月に予定されている消費増税の影響を受けやすいので、来期は減益になる可能性があります。それでも来期以降に最高益を更新していく力のある会社と判断しています。優待狙いで長期投資していく価値はあると考えています。
【6】ANA HD(9202)
ANA HDは、前期営業利益で最高益を更新しました。今期も、ほぼ前期と同水準の営業利益を予想しています。観光ブームの恩恵を受けています。訪日外国人観光客の増加に加え、日本人の海外旅行も増えつつあります。今年5月のゴールデンウイークでは10連休の恩恵で、例年を大幅に上回る旅客を確保できた模様です。
同社の最高益更新に貢献しているのは、羽田発着便の増加です。新たに配分される発着枠の配分を多く受けてきたことが、業績拡大に寄与しています。世界の航空業界を見渡すと、既存の大手航空会社は、LCC(低運賃の航空会社)との競争激化で、軒並み業績が悪化しています。日本の航空会社の業績が好調なのは、海外に比べると、まだ国内ではLCCとの競合が少ないからと言えます。特に、羽田空港では、深夜しかLCCが発着しないので、羽田空港が航空会社のドル箱となっています。
ANAはこれからも観光ブームの恩恵を受け、長期投資に適格の優待銘柄と判断しています。ただし、将来、羽田空港にLCCが大量に入ってくるようになる場合は、投資判断を変える必要が出ます。羽田空港の発着枠は簡単に増やせないことと、現時点での日本の航空行政を見る限り、そのリスクは低いと考えています。
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