6.要注目!個人投資家はどうする?
いずれにしても、「ローン」の「証券化商品」が、いざと言うときに値段が大きく下がることには注意が必要です。今、金融庁が金融機関の保有状況等を細かく調べ始めた米国CLOは、「ローン」の「証券化商品」です。日本の機関投資家から投資された莫大な資金は米国に渡り、ローンとして米国の中小企業に貸し付けられています。あまりに莫大な資金が提供されたため、その中小企業ローンの審査基準は年々甘くなり、最初に出てきたとおり、米国のイエレン前FRB議長をはじめとする主要人物が警鐘を鳴らす状況に至っています。格付けの低い企業に審査基準の甘い貸付が行われていますので、ちょっとでも景気が悪化してくると、すぐに値下がりやデフォルトが顕在化するリスクがあります。
さて、個人投資家はこのような状況で、どう対応すればいいか?
まず、「米国のバンクローン」のファンドを持っている方は、中身が「米国中小企業向けローン」であるかどうかを確認してください。今、警鐘が鳴らされている資産「そのもの」です。もし、米国の景気が悪化方向に向かったり、大量に保有している日本の金融機関が売りに回れば、値段が下がることが予想されますので、対応を考えておいた方がいいと思います(もちろん、持ち続ける、という選択肢もアリです)。
それから、「米国のハイイールド社債」のファンドを持っている方、中身が「米国で格付けの低い社債」であるかどうかを確認してください。全部ではありませんが、一定割合で、「中小企業ローン」と「ハイイールド社債」の両方から借り入れしている企業もあるんです。当然、その企業がデフォルトすれば、ハイイールド社債もデフォルトする可能性が高いです(もちろん、持ち続ける、という選択肢もアリです)。
一方で、どちらも持っていない方は、「下がったところで買い」を考えてみてはいかがでしょうか。上記を読んでいただければ、「想定以上に値下がりするリスクがある」、裏を返せば、「想定以上に値下がりしたところで買えるチャンスもある」資産だということがお分かりいただけるかと思います。どこまで下がるかはわかりませんが、「だいぶ下がったな」と思ったところで買って、しばらく我慢して保有していれば、適正水準まで値段が戻ってくる可能性が高いと思います。
最後に追加情報です。金融庁が検査に入り、自ら大量保有を発表した農林中金ですが、投資しているローン担保証券(CLO)は、すべて満期保有目的と記述されていました。これは、決算のときに、原則、時価評価しなくてよいのです。大幅下落したときに、監査法人から減損するように言われなければ、多少値段が下がってもビクともしません。
しかし、その他の金融機関は今のところ、「満期保有目的」か否か、わかりません。もし、「時価評価をしなければならない保有目的」だった場合には、値段が下がるに連れてみるみる損失が広がって行き、CLOと利益が出ている他の資産を売却→→パニック売り、に繋がっていく可能性も否定できません。
参考として、リーマンショックのときに、バンクローンの指数がどれくらい下がったか、掲載します。
バンクローン指数(2007/4/30~2019/6/24)、2007年4月30日を100とした場合の価格