1.米国のサブプライムローンと中小企業向けローンの比較
まずは、リーマンショックの引き金になったと言われている米国のサブプライムローン。「信用力が低い個人向けの住宅ローン」ですが、米国では、個人個人に返済能力のスコアがついています。このスコアが一定水準以上なら「プライムローン」、一定水準未満だと「サブプライムローン」となります。
一方で、米国CLOに入っている中小企業向けローンですが、企業の信用力である格付けが一定水準以下(特にBB格以下)のものがほとんどを占めています。もしこのような企業が社債を発行すると、投資適格社債ではなく、ハイイールド社債となります。
以上から考えても、どちらも数字や格付けで「信用力が低い」ことが裏づけできるローンです。「信用力が低い」ということは、「デフォルトする確率が高い」ということです。
2.リーマンショックの簡単なおさらい
サブプライムローンが引き金で、どのようにリーマンショックが起きたのか、流れを説明します。
(1)サブプライムローンの返済が滞る (延滞・デフォルト等が起きる) ↓ (2)サブプライムローンの価格が下がる ↓ (3)サブプライムローンを含んでいるCDO(証券化商品)やデリバティブ商品の値段が下がる ↓ (4)当該商品を持つ金融機関やファンドの運営が苦しくなる (2007年8月 BNPパリバショック) ↓ (5)当該商品の保険会社(米国モノライン)の経営も苦しくなる ↓ (6)ますます当該商品の値段が下がる ↓ (7)当該商品を持っている金融機関が損失覚悟で売る (合わせて利益が出ている商品も売って帳尻を合わせる) ↓ (8)サブプライムローンと関係のない金融商品の値段も下がる ↓ (9)パニック売りが出る ↓ (10)金融機関が破綻する |
簡単な説明ですが、以上のような連鎖が起きました。2008年3月の米国ベアスターンズ証券は救済措置が取られたものの、同年9月のリーマンブラザーズ証券は破綻、となりました。
3.クレジット商品の中のローンの位置づけ
なぜパニック売りが出るほど値段が下がったか。筆者の考えでは、ポイントはクレジット商品の流動性にあると考えています。
サブプライムローンが属する「クレジット商品」は、日銀のHPでは、以下のように説明されています。
クレジット商品には、貸出債権(ローン)や社債、CP(コマーシャル・ペーパー)のほか、さまざまな信用リスクを加工して証券の形で売買する「証券化商品」や、信用リスクを原資産とする派生商品(デリバティブ)である「クレジット・デリバティブ」などがあります。
「社債」は機関投資家から個人まで幅広く取引がされているため、流動性が高い商品です。CPは機関投資家がほとんどですが、ざっくり言うと「満期までの期間が短い社債」と言え、比較的流動性は高いと思います。次に来るのが「ローン」です。
「ローン」を売買?と思われるかも知れませんが、国内で身近なのは「住宅支援機構の住宅ローンの証券化商品」が挙げられます。取引の参加者が少ないため、社債やCPに比べると、流動性は低いと言えます。
以上より、「流動性」の観点からは、社債>CP>ローンの順で流動性が高いと思います。
ちなみに、米国では日本より早くから住宅ローンの証券化商品が発達していますので、日本に比べると住宅ローンの流動性は高いといえます。
中小企業向けローンは、日本ではほとんど売買されていませんが、米国では、売買されています。法律が整備されていることや、それに投資する投資家も豊富なため、売買市場が発達しています。しかし、上記社債や住宅ローンほどの流動性はありません。
近年、日本でも「バンクローンファンド」が個人向けファンドとして出現してきましたが、この「バンクローン」こそ、「米国の中小企業向けローン」のファンドです。
まとめるとクレジット商品の流動性の順は、社債>CP>住宅ローン>中小企業向けローンの順になります。