資産全体の「見える」化で適切な相続対策が立案可能に

 時価評価について、金融資産については取引所の相場で評価することに異論はないでしょう。この点、不動産と非上場株式については2つの評価方法があります。

 換金価値を評価するのであれば、不動産については実勢価格(市場価格)で、非上場株式については公正価値(M&A株価)で評価すべきということになります。しかし、その評価は容易ではなく、また相続税との対応関係が見えなくなります。そこで、不動産と自社株式は相続税評価を行うのです。これによって、相続税との対応関係が明確になります。

 市場価格ではなく相続税評価を行うといっても、その評価額は定期的に値洗いする必要があります。すなわち、非上場株式については「類似業種株価」が更新されるときに、また、宅地に係る路線価については年1回「路線価」が改定されるときに評価換えを行う必要があります。

 このように金融資産、不動産、非上場株式をタイムリーに時価評価し、家計貸借対照表によって資産全体を「見える」化することにより最適な資産構成に向けての相続・生前対策を立案することが可能となります。

[図表2]家計貸借対照表による「見える」化

出所:岸田康雄『相続生前対策パーフェクトガイド』中央経済社