うまくいかない本当の問題の正体は、“一喜一憂”の心理

 その心理とは、“一喜一憂”の心理です。筆者は、どのような運用をするかよりも、一喜一憂してしまうか否かのほうがよほど重要で、それが強い人ほど資産運用はうまくいかないように感じます。

 一喜一憂は、マーケットが上昇し資産が増えると「もっともっと」となり、お金を投じさせます。一方で、マーケットが下落し資産が減ると、不安になり怖がらせ、踏み込めないようにし、場合によっては、耐えられなくして売却させるなどします。

 この結果、「高いところで買い、安いところで買えない、もしくは売却してしまう」ことを繰り返し、資産を減らしてしまうのです。積み立ての場合は、マイナスの状態が続くと「これ以上続けても意味がない」と思い込み、積み立て自体をやめてしまうのです。

 一喜一憂にも様々な感情がありますが、一番問題があるのは“怖れ”でしょう。怖さを感じてしまうと、今が安いと思っても踏み込めず、買えなくなってしまいます。往々にして、トントンになったら止めたいという気持ちになるので、プラスもなくなってしまいます。

 では、怖れが出てきた時に、どのように対応すればよいのでしょうか? それは怖れから逃げようとせず、向き合うことです。なぜ、怖れが出てくるのか、自らの心とじっくり向き合って書き出し、その1つ1つが現実に起こっていることなのかを確認していくとよいでしょう。実際には幻想である可能性が多々あります。「これ以上減ると、自分の老後は破綻する」など、その時点では現実となっていないにもかかわらず、将来のことに対して怖がっているのです。幻想だとしたら、怖れを抱く必要はありません。

 うまくいかない人は、上がってワクワク、下がって怖いという一喜一憂の感情的な世界にいます。うまくいく人とうまくいかない人との違いは、一喜一憂、特に怖れに対して勇気を持って向き合い、乗り越えたか、支配されたままかの違いです。乗り越えた人は、至って冷静で、上がったら坦々と売り場を考え、下がったら坦々と買い場を考えている、不動心の世界に到達できているのです。

 もう1つ、一喜一憂している人は、うまくいかない時に人のせいにする傾向があります。投資信託であればファンドマネージャーに不満を持ったり、トランプ大統領や安倍首相、日銀のせいだと考え、人によっては怒りの感情に到達したりします。うまくいく人は、誰のせいにもしません。最終的にはすべてのことが自分の責任と捉えているからです。

 うまくいかなかった時に、決して人のせいにしないことです。その銘柄を最終的に選んだのはあなたです。ただし、あなたが悪いということではありません。ただ、資産が減っているというだけで、誰も、そしてあなた自身も悪くありません。そのように本心から思えた時、一喜一憂がなくなり、冷静さを取り戻すことができているでしょう。