6月17日~21日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反発。中東の地政学的リスクが高まるなか、米国の原油需給に改善兆候が見られた。また、米中関係の改善および米利下げ観測を背景に投資家心理が改善したこともあり、この週は買いが優勢となった。

 中国の弱気な経済指標や、直近の上昇に対する反動から週初は売りが先行する場面も見られた。しかし、ホルムズ海峡付近のタンカー攻撃を受け、地政学的リスクが高まっているため、下値を積極的に売り込む動きは見られなかった。むしろ下げた局面では、改めて中東不安が高まり、買いを促す格好に。また、石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国による協調減産が継続するとの見方も下値を支え、51ドル半ばを安値として切り返す動きとなった。

 週初こそ値を下げたが、その後は堅調に推移した。翌営業日18日には、米中貿易交渉の妥結期待が高まり、投資家心理が改善したことで買い気が強まった。トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席と電話会談を行い、今週開催されるG20で会談することを明らかにした。首脳会談が実現すれば、これまでの両国の貿易摩擦が和らぐとの見方が広がり、世界経済失速への警戒感が大きく後退した。これにより原油需要が伸び悩むとの見方も薄れた。また、通商問題への懸念緩和からリスク選好度が増し、さらに年内の利下げ観測への期待もあり、株式市場が大幅に上昇、リスク選好ムードは原油相場にも波及した。

 週央には需給面からも買いが入った。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は市場予想以上の取り崩しとなった。ガソリンやディスティレートなど石油製品在庫も予想に反して減少、ガソリン需要は週次統計開始来で最高水準を記録した。これらを好感した買いが入り、WTI期近7月限は直近に揉み合っているレンジ上限付近まで上昇した。

 週後半はさらに値を伸ばした。イランが米国の無人偵察機を撃墜したとの報が入り、両国の軍事衝突の恐れが一層高まった。イラン革命防衛隊は領空侵犯を理由に撃墜したと表明、これに対してトランプ米大統領は、イランは非常に大きな過ちを犯したと言明した。撃墜した場所がイラン南部ホルモズガーン州の沖合で、石油輸送路の要衝であるホルムズ海峡付近であることもあって、緊張感がより一層高まった。その後、米国がイランへ報復攻撃を検討していたことが判明、週末にはさらに値位置を切り上げる格好となった。また、米連邦準備理事会(FRB)が年内利下げを示唆したこともあり、ドルが売られ、株が買われる動きとなったことも、原油相場の上昇を後押しした。このほか納会事情や55ドルの節目を上抜いたことによるテクニカル買いなども重なり、期近ベースとしては前月下旬以来の高値を付ける場面も。