2:インデックス運用は分かりやすい

 特に、運用に手間と時間をかけることができない個人投資家にとって、インデックス運用が複数の意味で「分かりやすい」ことの長所も強調しておきたい。

 まず、インデックス運用の場合、たとえば国内株式であればTOPIX(東証株価指数)のようなインデックスの過去の変動を見ることによって、自分が投資しようとしているポートフォリオが持っているリスクやリターンの特性を大まかに知ることができる。

 これに対して、アクティブ運用のポートフォリオの場合、同じ運用者の長期にわたる運用パフォーマンスを見ることが難しい場合が多いし、運用者がおなじであっても運用方針が変わることがあり得るので、過去を将来の参考にできる程度がインデックス運用の場合ほどでないことが多い。

 第2の「分かりやすさ」として、現状把握の容易さが挙げられよう。例えば、TOPIX連動のインデックス投信に投資していれば、TOPIXの変動を見ておくと、自分の投資している資金の時価価値や運用パフォーマンスをほぼ正確にかつ同時に把握しておくことができる。

 自分が投資している投資信託の基準価額を調べることは、ほんの「一手間」ではあるが、手間がかかるにはちがいない。インデックス運用の商品に投資していると、日々のニュースと自分の投資の関係についても、インデックスの値の変化と共に情報が意識にインプットされる効果がある。

 インデックスの変動に連動して自分のお金が増えたり減ったりしているのだ、という実感があれば、運用の「リスク」について、実感を伴った知識を早く持ちやすいだろう。

 なお、国内株式のインデックスを見る上で、日経平均はポピュラーでなじみやすいインデックスだが、2000年4月の銘柄入れ替えの際に、実質的に50%強が入れ替わり、これが市場参加者に利用された結果、市場の変動とは関係のない10%以上の下ブレを起こし、前後に連続性の断絶が起きたことに注意しておきたい。

 この時の銘柄入れ替えでは、証券業界が2,000億円以上のトレーディング益を稼ぐ一方で、日経平均連動のインデックス・ファンドへの投資家や、日経平均先物をロング(買い持ち)していた投資家が大きく損をした。

 やり方が変わったことで、その後日経平均の銘柄入れ替えが大きなマイナスのインパクトを持ったことはないが、「2000年4月の断絶」には、分析上注意が必要だ。

 もう一つの大きな長所は、アセット・アロケーション(資産配分)との整合性が取りやすいことの「分かりやすさ」だ。

 アセット・アロケーションに使う「国内株式」、「外国株式」といったアセットクラスを代表するベンチマークは、多くの場合既存のインデックスであり、このインデックスを運用目標とするインデックス運用商品に投資すると、アセット・アロケーションと整合的な運用を無理なく行うことができる。

 仮に、バリュー運用のアクティブ運用に投資するとすれば、厳密には、アセット・アロケーションにあっても、バリュー運用を代表する指数を使いたくなるが、現実に使おうとするアクティブ運用と合致するベンチマークのデータを得ることは容易ではない。

「大まかにはTOPIXでいいではないか」という意見はもちろんあり得るが、TOPIXと十分異なる事に期待をかけてより高い手数料を払ってアクティブ運用の商品に投資するのだから、これは「残念な」運用管理である。

 機関投資家の運用にあって、運用管理のやりやすさ、計画と実行の整合性といった点については、インデックス運用が断然合理的だといえる。データや分析に関するリソースを豊富に持っている機関投資家にあってもメリットがあるのだから、まして、アクティブ・リスクの大きさや内容を数量的に把握することが難しい個人投資家にあっては、インデックス運用の優位性が明らかだ。