規制によって「都心のワンルーム」の希少価値が高まる

 ワンルームマンション規制ができたきっかけは、「税源移譲」という自治体が得る税金の在り方が変わったことによります。簡単にいうとこの法改正が実施されたことにより、地方自治体の財源は、「消費税」・「法人税」・「住民税」に重きが置かれるようになったのです。そのため、住民税を支払っていない大学生や働き始めの年収が低い社会人より、収入の高いファミリー世帯に住んでもらいたいという自治体の思惑により、ワンルームマンション規制は誕生しました。

 しかし、この規制により新規のワンルームマンションは建築が難しくなりましたが、今まで建築された既存マンションの価値を押し上げる要因になったのです。そのため、ワンルームマンション規制前の2005年に新築分譲された物件は、築10年が経過した2015年時点で新築当時の価格から10%程度しか下がっていないのが現状。区によっては、分譲当時の価格より上がっている区もあり、希少価値がつき始めています。

[図表2]ワンルームマンション規制の影響

 ワンルームマンション規制ができたことにより、23区内でも立地による格差が生まれてきました(図表3参照)。資産価値を維持しやすいのは、ワンルームマンション規制のため今後、建築の見込みが少ない都心の物件になります。なぜなら、新規の供給が少ないためライバルが増えず、入居者を確保しやすいからです。

[図表3]ライバルが少ない方が資産価値は維持される

 その次は、ワンルームマンションの建築が規制されているその他23区の物件になります。やはり、規制があるのとないのとでは、ライバルの増え方も変わるため、資産価値は維持しやすくなるのです。

 ライバル物件が増え資産価値が維持しづらい物件は、建築に関する規制がないエリアの物件と言えます。どこもかしこも物件が建築できると、資産価値が維持しづらいのは当然です。このように法律が不動産市場に与える影響は大きく、今後も法改正に対しては高いアンテナを張り巡らせておけば、メリットとして返ってくることもあるでしょう。今、張っておきたいアンテナは、2018年6月に施行された民泊新法です。この法律も各自治体の条例によって、住宅地で運営における制限がかけられます。自身が所有する物件に対して、有利に働くよう情報を得ていきましょう。

 2025年以降に人口減少予定の東京ですが、単身世帯は増え続け2030年には全体の47.2%が単身世帯になると東京都が発表しました。つまり上記の図表1のように、全世帯である約700万世帯の半数が単身世帯になる訳ですから、約330~340万世帯は単身世帯なのです。

 一方で、首都圏分譲ワンルームマンション供給数は年間1万戸弱、2015年時点で累計にしても30万戸を割っています。このまま年間1万戸の供給があり続けても、330~340万戸には到底及びません。しかも、ワンルームマンションは好立地にあることが多いため、急激に供給が増えないのも特徴です。こういった需要のある物件を所有しておけば、マンション投資におけるリスクは、大きく軽減できるようになるでしょう。

(仲宗根 和徳/株式会社和不動産 代表取締役)

※この記事は2018年10月24日に幻冬舎ゴールドオンラインサイトで公開されたものです。

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