J-REITとマーケットとの関係性

 ここからは、マーケットとの関係性に話を移します。

 分配金の安定性は、高い順に住宅、物流施設、商業施設、オフィスでしたが、J-REIT全体の中でのシェアは、冒頭のとおり、大きい順にオフィス 41.9%、商業施設 18.1%、物流施設15.3%、住宅14.8%…となっています。ということは、J-REIT指数は、最も分配金の安定性が低いオフィスが中心になっている、ということです。

 ここで考えたいことは、J-REITは個別銘柄で取引されるよりも、ファンドやETF(上場投資信託)によるインデックス取引が多いため、住宅系銘柄のように分配金が安定的なのに、分配金の安定性が低いオフィス銘柄の影響を受けるケースがあるのではないか、ということです。

 実際の銘柄で検証してみます。実は、リーマンショック前から長く上場を続けている住宅系のJ-REITの銘柄は3銘柄しかなく、その中で、安定的といわれる3,000億円を超えるポートフォリオを持っているのは、先に出てきた日本アコモデーションのみ。その他は、合併などにより、リーマンショック前と比較できる銘柄はありません。

参考:日本アコモデーション(住宅系のJ-REIT)の推定利回りの推移

各種資料より楽天証券作成

 日本アコモデーションですが、リーマンショック前後約2年間で利回りは2.5%程度から、8%を超える水準になりました。実際には、この銘柄の分配金水準は大きく動かなかったのですが、J-REIT指数の下落や、オフィス銘柄の分配金減少の影響を受けて、株価が大きく下落したからです。今後も同様なことが起こるとは限りませんが、もし大きく下落したときは、高い利回りで投資できる可能性があります。

 ちなみに、東京証券取引所は、2012年から用途別REIT指数というのを発表していますので、参考に掲載します。

参考:東京証券取引所発表の用途別REIT指数の推移

東京証券取引所発表数値から楽天証券作成

 発表から7年が経ちましたが、今のところ、住宅指数が一番値上がりしてます。

 なお、住宅系REITは銘柄数がそれほど多くはありませんが、筆者が今後も分配金が安定的と予想する銘柄が2つあります。

 ひとつは先ほどから出ている日本アコモデーションです。リーマンショック前からデータがあり、しかも分配金も極めて安定的でした。三井不動産がメインスポンサーになっており、駅近物件が多く、シングル・ファミリー向けがほとんどを占めるため常に稼働率が高い状態です。この特徴が、安定した分配金を生み出しています。

 もうひとつはアドバンスレジデンス(3269)です。こちらは伊藤忠商事がメインスポンサーになります。この銘柄の最大のメリットは、300億円を超える「準備金」があることです。詳しい説明は省略しますが、この「準備金」は、物件売却のときに損が出ても、「準備金」で相殺することができることや、利益が目標に到達しなかったときに、予定通りの分配金を配当するための資金を「準備金」から拠出することができるため、「分配金」が予想通り(もしくは予想以上)出ることがほぼ確約されている銘柄といえます。J-REITが大きく売られて株価が下がるときは、買い場かもしれません。

J-REIT その2のまとめ

J-REITの不動産タイプ別の特徴

・J-REITへの組み入れは、オフィスが最も多く、次いで商業施設、物流施設、住宅の順。
・分配金の安定性は、高い順に住宅、物流施設、商業施設、オフィスの順。
・株価は上下するが分配金が安定的な住宅系の銘柄がある。

続いてJ-REITマーケットの主な特徴をお送りします。