二重特異性抗体など新薬開発が進行中、ワクチン事業にも期待

現地コード 銘柄名
02269

薬明生物技術

(ウーシー・バイオロジクス)

株価 情報種類

 73.65HKD
(6/4現在)

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 薬明生物技術は6月3日、初の「投資家デー」を開催し、この場で中国国内のバイオ技術の開発状況や自社の技術プラットフォーム、米中対立の影響などについて最新情報を共有した。このイベントに参加したBOCIは、以下のような情報をアップデート。目標株価を据え置いた上で、同社株価の先行きに対して強気見通しを継続している。

 同社の売上高を構成するのは、受託製造業務(CMO/CRO業務)収入と、国内プログラムに基づく「マイルストーン収入(ライセンス契約後の開発進捗段階に応じて一定額が支払われるシステム)、特許権使用料収入の3種。経営陣は自社パイプライン(新薬候補)について、向こう数年で総合プロジェクト40件超が加わる見通しを明らかにしている。治療法改革においては「二重特異性抗体がカギを握る」との見方だ。これまでに承認された二重特異性抗体は3種だが、現時点で84種が臨床試験段階、213種が臨床前段階にあるという。同社は自前の創新薬・特許薬開発プラットフォーム「WuXiBody」を通じ、19年にプロジェクト10件、20年には20件を確保する目標を掲げている。

 4月にワクチン世界大手との戦略提携に向けた覚書を交わしたことを受け、同社と上海海利生物技術との共同出資会社(薬明生物技術が70%、上海海利が30%を出資)は世界市場へのワクチン供給に備え、専用施設を建設する運びとなった。20年契約の下、総額30億米ドルを超えるワクチンを供給する計画。同社は「21年までに大型契約1件をまとめる」ことを目指してきたが、実際には予想以上に早くこの目標を達成した。同社によれば、このワクチン事業は22年に年商約1億米ドルに到達する見通しという。

 一方、BOCIは中国のバイオ技術開発分野の活況に目を向けている。上海周辺エリアは、ボストン、サンフランシスコに次ぐ世界3位のバイオ技術ハブ。がん免疫薬やバイオ後続品などの開発・投資が大々的に行われ、ライセンス取引ビジネスも活発化している。さらに医療関連のプライベートエクイティファンド(PE)、ベンチャーキャピタル(VC)などの投資ファンドビジネスがここ数年で劇的に拡大し、PE・VCからの新規調達資金は18年に総額428億米ドルを記録。この資金を利用した投資は173億米ドルに達した。

 米中対立に関しては今のところ、米国プロジェクトが遅延するといった影響は出ていない。一部の設備や材料は米国製で、25%の制裁関税の対象となるが、19年通期利益に及ぼす影響は約100万-200万米ドルにとどまる見通しという。

 BOCIがDCF(ディスカウントキャッシュフロー)方式に基づいて設定した目標株価は、PEGレシオで1.5倍。21年の予想PERを57倍、18-21年の予想増益率を年平均37%と想定した上で目標株価を算出した。今後のレーティング見直しにつながる可能性がある潜在リスク要因としては、受託製造部門の需要や新薬開発プロジェクトの成功率などが予想以上に大きく変動する可能性を挙げている。