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2カ月で100ドル超の上昇となった金価格の今後を考える
吉田 哲
週刊コモディティマーケット
コモディティ(商品)をお取引いただく上でのコメント・アイディアを提供するレポートです。金をはじめとした貴金属、原油をはじめとしたエネルギー関連銘柄、とうもろこし・大豆などの穀物な…

2カ月で100ドル超の上昇となった金価格の今後を考える

2017/8/31
​8月29日(火)、金価格(以下ドル建て)は1トロイオンスあたり1,320ドルに達しました。
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●この2カ月間、金価格が100ドル超上昇した要因は?
北朝鮮情勢を巡る不安の高まりに加えドルの通貨としての魅力が低下したため。ドルの信用低下や、米10年債利回り低下により、「金」への投資需要が拡大した。

●「代替通貨」としての役割が続くと考える
ドル不安の高まり、ドル金利の低下で、代替通貨の「金」が買われる。地政学リスクは金価格の変動幅を拡大させる要因となり、金価格の長期的な方向性を決めるものではない。

●円建ての金はドル建ての金に追随して動くが、ドル円の変動によって異なる場合がある


 8月29日(火)、金価格(以下ドル建て)は1トロイオンスあたり1,320ドルに達しました。年初来高値を更新し、およそ11カ月ぶりの高値を付けました。以下のグラフのとおり、7月初旬に1,220ドル近辺だった金価格はこの2カ月間で100ドル超の上昇となりました。

報じられている要因は、北朝鮮情勢を巡るリスクの高まりです。

図:金(ドル建て)価格の推移 単位:ドル/トロイオンス
 

出所:CMEのデータをもとに筆者作成


この2カ月間、金価格が100ドル超上昇した要因とは?

 北朝鮮情勢を巡る不安の高まりに加え、ドルの通貨としての魅力が低下したため。ドルの信用低下、米10年債利回り低下により、「金」への投資需要が拡大しました。金の役割の一つに「代替通貨」があります。世界の基軸通貨であるドルを中心とした通貨の代わりを金が担うという考え方です。この「代替通貨」の考えにもとづけば、ドルが強い、つまりドルを保有する妙味が増している時は金を持つ妙味が低下し、逆にドルが弱いときは金を保有する妙味が増します。以下は金価格とドル指数の動きです。期間は上図と同じ金価格が100ドル超の上昇を演じた直近2カ月間です。

※ドル指数とは、複数の主要国通貨に対するドルの総合的な価値を示す指数です。

図:金価格とドル指数の推移 (60分足)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 この間の2つの銘柄の相関係数は-0.928です。相関係数は2つの値動きの関係を測る際に参考にする指標で、+1から-1の範囲で示されます。+1に近ければ近いほど同じような値動きであること(相関)(+1の場合は完全に同じ値動き)、-1に近ければ近いほど正反対に近い値動きであること(逆相関)(-1の場合は真逆の値動き)、0に近ければ近いほど関わりなし(無相関)となります。一般的には相関でも逆相関でも0.9をこえると2つの値動きは非常に近しい、あるいは正反対の傾向が強いとされます。また、以下は同じ期間の金価格と米国債利回り(10年)の動きです。

図:金価格と米国債利回り(10年)の推移 (60分足)

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 この間の2つの相関係数は-0.916です。この2カ月間、金価格とドルの総合的な価値を示すドル指数、金価格と国債利回り(10年)は強い逆相関の関係だったことがわかります。金価格の100ドル超の上昇の背景には、「北朝鮮リスク」だけでなく、こうしたドル、つまり米国の動向が強く関わっていると考えられます。以下はこの2カ月間で起きた米国に関わる主な事象と金価格への影響のイメージです。

 図:7月・8月の米国に関わる事象と金価格の関係

出所:筆者作成

 上図をもとに考えれば、足元の金価格の上昇について、“リスクの高まり”は全体の一部であり、多くは米国由来の材料によって起きている可能性があります。目先は、北朝鮮のリスクの行方と同時に、米国由来の各材料の動向に注目する必要があります。

「代替通貨」としての役割が続くと考える

 ドル不安の高まり、ドル金利の低下で、代替通貨の「金」が買われる。地政学リスクは金価格の変動幅を拡大させる要因となり、金価格の長期的な方向性を決めるものではない。日米欧いずれも、国債を大量に保有し、中央銀行バブルといえる過剰流動性相場が起こっています。米欧は中央銀行の緩和「出口」をさぐるとしていますが、膨大にふくらんだ資産の圧縮は容易ではないと考えます。

 報じられているとおり、中央銀行の資産の圧縮にはタイミングを見計らうことがそもそも難しく、仮に開始したとしてもマイナス面の影響が懸念され思ったように進捗しない可能性があります。その意味では中央銀行にとって資産の圧縮は、時間軸の長い、非常に重い課題だと考えられます。米国の場合、仮に同国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度)が国債の再投資をやめられない、あるいは圧縮を開始できても思ったように進捗しない状態が長期化すれば、ドル金利が弱含む状態が長期化する可能性があります。

 また、膨大に膨れ上がった資産をどう対処するか?対処できるのか?という疑問は中央銀行へこれからも継続して向けられると思います。通貨発行の機能を有する中央銀行へのさらなる長期化の様相を呈する不信もまた、金の長期的なサポート要因になると考えます。
 

図:FRBの資産残高 単位:兆ドル

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

円建て金はドル建て金に追随して動くが、ドル円の変動によって異なる場合がある

図:ドル建て金と円建て金の推移
 

出所:CME(日経平均先物)・TOCOM(東京商品取引所)のデータを基に筆者作成

 同じ金(ゴールド)でも日本では「円」で、例えば中国では「元」、欧州では「ユーロ」、英国では「ポンド」など、国によって取引される際の通貨が異なります。それぞれの金を「円建て(えんだて)」「元建て」「ユーロ建て」「ポンド建て」と呼びます。

 「ドル建て」は、米国の通貨であるドルが現在の世界の基軸通貨であると認知されているため、他の通貨建ての同じ商品の値動きの指標になる傾向があります。ドル建て金の値動きは円建て金の値動きの指標ということです。ただ、ドル建てと円建てでは通貨が異なるため、それぞれの通貨の組み合わせである“ドル円”の動向がドル建て金と円建て金の関係に強弱を与えます。
 

 強弱を与えるとは、基本的には円建てはドル建てに追随するものの、ドル円の動きによって、ドル建て金よりも円建て金が大きく上昇(下落)、ドル建て金は上昇(下落)したが円建て金は下落(上昇)、ドル建て金は動いた(動かない)が円建て金は動かない(動いた)、などの事象が発生するということです。ドル建てを主としたドル建て金・円建て金の主従関係にドル円が強弱を加える、ということです。
 

 以下の図は筆者が作成したドル建て金とドル円の変動を、円建て金の変動に換算した表です。あくまでも目安としてご覧ください。

図:ドル建て金の変動幅とドル円の変動幅をもとにした円建て金の変動幅 単位:円/グラム

出所:CME・TOCOM等のデータを基に筆者作成

 円建て金はドル建て金に追随する傾向があるため、ドル建て金(縦軸)が上昇すれば、ほとんどの場合円建てはプラス圏に、ドル建て金が下落すれば円建て金はマイナス圏に推移します。しかし、ドル建て金が上昇してもドル円がドル安・円高方向に進んだ場合、ドル建て金の上昇分は円高によって相殺されます。円高の度合が大きい場合、ドル建て金が上昇していても、円建て金はマイナスになるケースもあります。

 逆に、ドル建て金が下落してもドル円がドル高・円安方向に進んだ場合、ドル建て金の下落分は円安によって相殺されます。円安の度合が大きい場合、ドル建て金が下落していても、円建て金はプラスになるケースもあります。アベノミクスが始まった後の急激な円安時、ドル建て金はほぼ横ばいでしたが、円建て金は上昇しました。上図はあくまで参考としてご覧ください。

※詳細はこちらをご参照ください。ドル建てと円建て」 記事をみる

 

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