6月3日~7日 原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は往って来い。週前半は売りが先行、WTI期近7月限は一時50.60ドルまで下落し、期近ベースとしては約5ヶ月ぶりの安値を付ける場面も見られた。しかし、週後半は持ち直す動きとなり、前々週とほぼ同水準で取引を終えている。
米中貿易戦争の激化が懸念されるなか、米国とメキシコの関係悪化が懸念された。第2位の輸入相手国であるメキシコに対して米国は、不法移民流入阻止に対する措置を講じない限り、6月10日よりメキシコから輸入する全製品に対して関税を課すとしていた。トランプ米大統領はメキシコとの協議に関して十分とはいえないとツイート、難交渉が続いていることが窺え、予定通り関税が発動されると、景気減速への懸念が一段と強まることは必至。特に米国はメキシコとの間で原油および石油製品の輸出入が多く、輸入している原油の数量よりも輸出する石油製品の数量が上回るため、米国内の石油需給がさらに緩むことも警戒された。
米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油および石油製品在庫は大幅に積み上がった。この週の統計では、原油輸入量が増えたことが在庫増の主たる要因となったが、関税発動でメキシコからの輸入量が減ったとしても、米国内の需給は改善しない可能性が高い。原油生産量は過去最高を更新したことも在庫増の一因だが、リファイナリーの稼働は上がってきている。それにもかかわらず、在庫は予想外の大幅増となっており、輸入水準が下がったとしても、即座に在庫取り崩しが進むとは考え難い。これらを手掛かりに週前半は売りが先行、WTI期近7月限は一時約5ヶ月ぶりの安値へと値を沈めた。
しかし、週後半になると状況は一変、投資家心理の改善から買戻しの動きに拍車がかかった。週末発表された5月の米雇用統計は弱気な内容となり、これを受けて利下げ期待が膨らんだ。ドルは売られ株価は上昇、原油も投機マネーの動きに連動して買い戻された。また、サウジアラビアから減産延長を示唆する声も聞かれた。6月25-26日には石油輸出国機構(OPEC)加盟国と非加盟国の定時総会が開かれるが、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、現行の減産を継続すべきとしたうえで、OPECは合意に近づいていると言及している。7月以降も協調減産が継続することで、需給不均衡が改善に向かうとの期待が浮上した。