米中対立に新展開、さらに緊張高まる
トランプ米大統領は2019年5月30日、メキシコからの全ての輸入品に5%の関税を課す方針を示しました。メキシコ政府による国境での不法移民対策が不十分であることを理由に挙げています。6月10日から5%の関税を導入し、その後も不法移民対策をメキシコ政府が強化しなければ7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%と段階的に関税を引き上げる、という強い姿勢です。
これに対しメキシコのロペスオブラドール大統領は、トランプ大統領が指摘するメキシコ経由の中米不法移民に対して「メキシコは十分に責任を果たしている」とした上で、「対立は対話を通じて解決すべきだ」と述べています。米国のメキシコに対する措置の裏側には、今後、米国への中国製品の迂回(うかい)輸入地となるであろうメキシコに対して先手を打ったという指摘もあります。
他方、中国は報復関税に加え、対米レアアース(希土類)輸出を制限する計画があるとされています。とくに米国への輸出が多い「ジスプロシウム」や「イットリウム」などの重レアアースの輸出規制に重点が置かれる可能性が高い見込みです。中国はハイテク製品に欠かせないレアアースの世界シェア8割を占めています。
さらに2日には中国国務委員兼国防相が「他国が台湾の分離を図るのであれば、全ての犠牲を払って闘うという選択肢しかない」と米国を念頭に置いた異例の発言をし、台湾支援の姿勢を強める米国をけん制、軍事的な緊張が高まるかもしれないと懸念されています。
株式市場は米中対立に戦々恐々とし、投資家が積極的な売買を控える展開が予想されます。もちろん、政治の動きひとつで状況は一変することが予想されるものの、それがいつ、どのような形になるのか分からない現状です。