4.苦戦する中国事業。日系の成功企業に立て直しのヒントあり

 国内は今後も安定成長が見込めます。ただし、海外で利益をあげて成長しなければ、株価は上がらないでしょう。不振の中国事業の立て直しが鍵となります。

 海外では、主に中国と台湾で店舗を展開しています。現在の海外の店舗構成比は12%(2019年2月期)。店舗数は71店舗で、そのうち中国が37店舗、台湾が31店舗です。

 このうち2014年から事業を開始した中国について、会社側は当初の「100店舗出店構想」を見直すと公表しました。

 中国事業再構築のポイントは「人材の確保」と「品質の訴求」と考えられます。実現には時間を要するとみられますが、この2軸を作ることができれば中国の消費者の需要にリーチすることができるでしょう。中国事業を成功させた日本企業の先例を見る限り、時間をかけてこの2軸が確立されています。

 先例としては、ファーストリテイリング(9983)資生堂(4911)ピジョン(7956)ヤクルト本社(2267)が挙げられます。

 ファーストリテイリングは、今では中国事業の好調さが評価されていますが、2002年に中国事業をスタートした頃は苦戦していました。しかしその後、エリアごとの消費者の特色などを熟知した中国出身のリーダーが同事業をけん引し、また、従業員の育成にも注力してきた結果、中国事業を拡大させました。

 資生堂の中国展開には長い歴史があります。1980年代に北京で商品の販売をスタート、1991年に北京で合弁会社設立、2008年に上海に研修センターを設立するなど、長年にわたり中国の消費者および中国の商習慣と向き合い、さらに従業員教育にもコストをかけてきました。

 この2社は「品質」を訴求しており、それが中国の消費者の間でも認識・評価されている点が共通しています。中国の消費者がそれを認知するのは容易ではありませんでしたが、資生堂は専門店制度を活用し、地域のお店が地域の消費者に直接アプローチし、また、都市部では大々的なマーケティングによって認知度を高めていきました。ファーストリテイリングは、購入した中国人の「口コミ」やオンラインマーケティングの強化によってその品質が徐々に認識されていきました。

 2002年に中国事業に本格参入したピジョンやヤクルト本社は、子育て世帯に「高い品質」を訴求し、彼らの需要をつかむことができました。ヤクルト本社は現地でも「ヤクルトレディ」制度を築き上げ、教育を受けた彼女たちが地域を回り、なぜヤクルトが健康に良いのかを啓蒙することで認知度を地道に高めていきました。

 翻って、ニトリは日本では品質が良く、値ごろ感があることが評価されていますが、中国では、品質の良さが伝わっていない可能性があります。製造コストの低い中国には多数の家具メーカーや雑貨メーカーがあると考えられ、値ごろ感のある価格帯は競争が激しいと考えられます。ニトリHDは、現地メーカーが簡単に作ることができない「品質」や「機能性」で差別化し、なぜニトリで購入するのか、その理由を現地の消費者に認識してもらう必要があると考えられます。