投資方法には変化なし

 さて、2010年に出版された「ほったらかし投資術」は、5年後の2015年にほったらかし投資術全面改訂 インデックス運用実践ガイド(朝日新書)として改訂版が出ている。また、昨年の8月には、別の出版社から山崎元のほったらかし投資(TJMOOK 宝島社)というムック本が出版されている。

 これらの書籍で「こうやるといい」と紹介している投資方法は、後になるほど単純化されているが、基本的に同じだ。

 まず、生活に必要な資金を別に確保した後に運用できるお金について、リスクを取ってもいいと思う金額を内外のインデックス・ファンドに投資し、リスクなしで運用したいと思う金額については個人向け国債変動金利型10年満期を中心に運用する。いずれの書籍もそうなっている。著者としての欲目があるかもしれないが、最初の書籍を買って投資を始めた人も、内容を理解してくれていれば、その後の運用には何の支障もなかったはずだ。

 なお、2010年の書籍を読んで投資を始めた方は、まずまずの運用結果を得たのではないかと思うが、これは書籍の内容や著者が優れているのではなく、主としてマーケットが良かったからだ。

 もっとも、こうした良い市場環境の下で投資していても、金融機関の言いなりに売買を繰り返していたような方の場合、運用結果が良くなかった可能性が大いにあるので、「多少は、お役に立てたのではないでしょうか」というくらいのことを読者に(控えめに)言ってもいいかもしれない。

「全面改訂版」を出した大きな理由が2つある。1つには2014年からNISA(少額投資非課税制度)が始まったのでこれへの対応を追記したかったことと、もう1つにはインデックス・ファンドの商品性が改善し、特に手数料の引き下げが進んだ事で、商品ガイドに改定の必要性を感じたことだったと記憶している。もちろん、せっかく改訂版を出すので、新たにETF(上場型投資信託)について詳しく紹介しよう、といった新しい内容の追加もあったし、水瀬氏、筆者それぞれにその間に投資の説明方法として「こうした方が分かりやすいのではないか」と思う工夫を盛り込んだということもあった。

 その後、現在までの外的環境の変化を見ると、iDeCo(個人型確定拠出年金)の対象者拡大やつみたてNISAの創設など、制度面での投資の後押しが一段と進み、特につみたてNISAの影響で、インデックス・ファンドの手数料率引き下げ競争がさらに進んだ。端的に言って、「ほったらかし投資」の利用者にとっての環境は一段と改善したと言えるだろう。

 ただし、手前味噌ながら、最初の「ほったらかし投資術」には、投資の考え方とポートフォリオの作り方、投資商品の選び方、インデックス・ファンドに関する注意点など(例えば東証一部の定義変更が行われた場合、TOPIXの何に注意が必要か)、必要な要素は網羅されていたように思う。

 とはいえ、主なるユーザーと想定される投資初心者には、後の本になるほど読みやすいはずだ。