激化する米中貿易戦争で先行き不安高まる

 米中の貿易関税の報復合戦が激化してきました。

 5月5日、トランプ米大統領は中国製品2,000億ドル相当への追加関税を10日に10%から25%に引き上げるとツイートしました。そして10日に米中貿易協議が物別れに終わると、トランプ大統領は中国からの残り全ての輸入品(約3,000億ドル)に対する関税上乗せの手続きを始めるように指示。

 中国はこれに対抗し13日、600億ドル相当の米国製品に課している関税を、現在の5~10%から最大25%に、6月1日に引き上げると、発表しました。

 5日のトランプ大統領のツイート発言直後は楽観的だった投資家たちは、次々と発せられる追加関税の報復合戦で、景気の先行き不安が高まり、株式市場は急落しました。米国や中国の株だけでなく、日本にも大きな影響が及ぶとの不安から、令和時代に入ってから日経平均株価は、1,000円以上の値下がり。ドル/円は111円台から109円割れ寸前まで円高となりました。

1,000円以上急落した日経平均は何を暗示する?

 日経平均1,000円以上の急落は、米中貿易摩擦の深刻化が日本経済の先行きを左右することを暗示しているようです。
 5月13日に内閣府が発表した3月の景気動向指数の速報値で景気の基調判断を「下方への局面変化」から、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」へと引き下げました。6年2カ月ぶりの「悪化」となります。

 過去に「悪化」となったのは、基調判断を示すようになった2008年4月以降で2回。リーマン・ショック前後の2008年6月~2009年4月と、第2次安倍内閣発足前後の2012年10月~2013年1月の2回です。

 景気動向指数とは、景気回復か、後退かという方向性を総合的に示す指標です。5段階の基調判断を示しますが、今回、その指標が「悪化」という景気後退の可能性が高いことを示しました。

 ただ、景気動向指数は生産や消費、雇用などの参照数値から機械的に決まりますが、政府は経済環境などを総合的に勘案し、月例経済報告で公式な景気認識を示します。