5月7日~10日 原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は揉み合い。米中貿易問題が深刻化することへの懸念から上値重い商状となったが、米国の原油在庫が予想外の減少となったため下値も堅かった。
米中関係の悪化に伴う景気鈍化が懸念されている。9-10日開催の閣僚級会議を前に、トランプ米大統領は5日、中国が貿易協議での約束を破ったとツイート、10日から中国からの輸入品に対して関税率を引き上げることを表明した。また、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表も翌6日、中国側の姿勢を批判し、10日からの対中追加関税引き上げ方針が表明された。昨年12月より関税引き上げを保留してきたが、ここにきて休戦が終わり、関税合戦が再燃する可能性が出てきた。中国側がどの約束を反故にしたのかは不明だが、米国は強硬姿勢を崩しておらず、これに対して中国側が再度報復に出るのではとの懸念が広がった。同大統領は9日、習近平国家主席から書簡を受け取ったことを明らかにし、週内に協議が合意に達することへの期待感を示したが、双方の立場は硬化しているとみられ、過度な不安感が幾分和らいだに過ぎず、依然として予断を許さない状況にある。貿易戦争に発展するようだと、世界的に景気後退につながる公算が大きく、投資家心理の冷え込みから株式市場は軟化、安全資産の金が買われるなど、リスクオフムードが強まっている。リスク回避の動きのほか、エネルギー消費2大国の需要鈍化への懸念も原油相場の重石となった。
一方で下値も堅い状況。低位の輸入が続いていることで、米国の原油在庫が増加予想に反して減少した。今後、リファイナリーの稼働が上がる(原油需要が増加する)時期に入ることもあり、米国の原油需給が改善するとの期待感が下値を支えた。また、米国が中東に空母を展開、イランとの緊張の高まりもサポート要因となっている。米国は2日からイラン産原油の全面禁輸に踏み切っているため、イランとの緊張のほか、イラン産原油の市場への供給減少も見込まれる。昨年11月から8カ国および地域が禁輸措置の適用除外を認められたため、イランの原油生産量は日量270万バレルほどで減少がとまっていたが、今後は生産が減ることは必至だろう。イランと同じく米国の制裁を受けているベネズエラの産油量も減少の一途を辿っており、これら供給減により世界的に需給バランスはタイトバランスへとシフトするとの見方も根強くある。