短期的な株価の変動に惑わされてはいけない

──ピーター・リンチの投資術とは具体的にどんなものなのでしょうか。

 ひと言でいえば「成長が期待できる企業をひたすら探し出し、そのなかで割安感のある銘柄に狙いを定める。で、購入したら何もせず株価が上がるのを待つ」というものです。こういうと拍子抜けする人もいるかもしれませんが、私にとってはちょっとした衝撃でした。

 というのも、それまで私は日々の株価の動きを分析したり、チャートを見て投資家の心理を読んだりして売買していました。事実、デイトレードまがいのことや、数日から数週間で売り抜くいわゆるスイングトレードなども試しました。ところが、ピーター・リンチは著書の中で「短期的な株価の変動に惑わされてはいけない、その企業がホンモノなら中長期的には必ず株価が上がるからドシッと構えていればいい」といっていました。

──なるほど。

 株の世界というのは投資家同士の化かし合いみたいなところがあるので、説明がつかない動きをすることが往々にしてあります。企業の業績とは関係なく、突然上がったり下がったりするわけです。だから、短期的な動きにとらわれすぎると、せっかく成長性の高い銘柄なのに売ってしまうといったミスをしがちなんです。

──そういうことがわかっていてもミスをすることがあった?

 人の心を揺るがすような動きをすることもよくあるんです。買ってはいけないときには買いたくなるような動きをしたり、売ってはいけないときには売りたくなるような動きをしたり。この動きは怪しいなと思ってもつい惑わされてしまう(笑)。

──会社勤めだと株式市場が開いている時間、ずっとチャートを監視しているわけにはいきませんよね。となると株価の動きの裏を読むといっても難しいのでは?

 おっしゃる通りです。やっぱりプロの投資家に比べたらハンディがあります。そういう意味では会社員投資家に短期トレードは向いていないといえるでしょう。

──ピーター・リンチが提唱する中長期投資のほうが向いている?

 それは間違いありません。よく仕事が忙しくて株式投資なんてできないという人がいますが、中長期投資であれば、毎日株価をチェックしなければならないなんてことはありません。実際、私も通勤のときや昼休みにスマホで株価の動きを確認したりはしますが、家に帰ってから証券会社の口座にログインすることは滅多にありませんし。昼間忙しいサラリーマン、子育てに忙しい主婦でも、まったく問題ないと思います。