人気投資ブログ「エナフンさんの梨の木」を運営するエナフンさんこと、奥山月仁さんのインタビュー、中編をお届けします。今回はエナフンさんが数億円を稼ぎ出した投資術について伺うとともに、会社員投資家にはどんなスタイルが適しているのかなどを聞きました。

ピーター・リンチの著書を読み、目からウロコが落ちた

──エナフンさんは若い頃は勝ったり負けたりだったのに、結婚後、本格的に始めたら大きく勝てるようになったわけですよね。何か秘策があったのですか?

 いえ、最初は秘策なんてものはまったくありませんでした。私は2000年に結婚して3年後、貯蓄ができたので本格的に株式投資を始めたのですが、その頃はとにかく投資環境がよかったんです。とくに新興市場の勢いがすごくて、誰がやっても勝てるような状況でした。私自身も何か特別なことをしたわけではないのですが、あっという間に3倍ほどに増やすことができました。もっとも、当時は10倍、20倍に増やしたなんて話があちこちから聞こえてきましたから、私が特にスゴイわけでもなかったんですよ。

──でも、その後、リーマン・ショックで多くの人がどん底に突き落とされます。

 そうですね。投資家の多くがかなりの資産を失いました。ただ、私自身は幸運だったんです。というのも2007年に入った頃から投機的傾向が強まったというか、相場が荒れ出しましてね。何か嫌な感じだな~と思い、保有株をすべて売り払い、いったん撤退したんです。

──リーマン・ショックの到来を予測したんですか?

 いえいえ、とんでもない。あくまでも何となく変だなと思っていた程度です。実際、2008年の3月に投資を再開し、半年後に米国リーマン・ブラザーズが経営破綻して、株価は大暴落しました。再開したといっても大きな金額ではなかったので、たいした被害を受けませんでしたが。

──でも、なぜ再開したのですか?

勝ったり負けたり、漠然と投資をしていた時代もあった、というエナフンさん。投資の転機はピーター・リンチがくれた。「私が漠然と(こうなのかな)と思っていたことがズバリまとめられていて、視界が開けました。何を見てどう判断して、どう動けばいいのか、を体系だって教えてくれた、投資の師匠です。今も迷ったら(ピーター・リンチならどうするかな)と考えることもあります」

 保有株を全部売った後、自分にはどんな投資方法が合っているのかをじっくり考えてみたんです。そんななかで1冊の本を思い出しました。投資関連の名著として名高い本なので、多少でも投資の勉強をしたことのある人ならご存じだと思いますが、米国の伝説的なファンドマネージャーであるピーター・リンチが書いた『ピーター・リンチの株で勝つ』という本です。ずいぶん前に一度読んではいたのですが、その時は「少し昔の投資法かな?」くらいに思っていました。30年も前に書かれた本ですからね。ところが、この時、再度読み直してみると、心底、納得が出来たのです。

──その本に倣ってやってみようと考えたわけですね。

 そういうことです。まあ、半年後にリーマン・ショックが起こり、思惑通りにはいかなかったのですが(笑)。

──リーマン・ショックの嵐が過ぎ去ってからはどうだったのですか?

 その後は順調そのものでした。ピーター・リンチが推奨するような銘柄を探して購入したら、その多くが何倍にも上昇し、一気に資産が膨れ上がりました。

──ピーター・リンチさまさまだった?

 はい、彼の本と出会っていなかったら、今も相変わらず、勝ったり負けたりしていたかもしれません。

短期的な株価の変動に惑わされてはいけない

──ピーター・リンチの投資術とは具体的にどんなものなのでしょうか。

 ひと言でいえば「成長が期待できる企業をひたすら探し出し、そのなかで割安感のある銘柄に狙いを定める。で、購入したら何もせず株価が上がるのを待つ」というものです。こういうと拍子抜けする人もいるかもしれませんが、私にとってはちょっとした衝撃でした。

 というのも、それまで私は日々の株価の動きを分析したり、チャートを見て投資家の心理を読んだりして売買していました。事実、デイトレードまがいのことや、数日から数週間で売り抜くいわゆるスイングトレードなども試しました。ところが、ピーター・リンチは著書の中で「短期的な株価の変動に惑わされてはいけない、その企業がホンモノなら中長期的には必ず株価が上がるからドシッと構えていればいい」といっていました。

──なるほど。

 株の世界というのは投資家同士の化かし合いみたいなところがあるので、説明がつかない動きをすることが往々にしてあります。企業の業績とは関係なく、突然上がったり下がったりするわけです。だから、短期的な動きにとらわれすぎると、せっかく成長性の高い銘柄なのに売ってしまうといったミスをしがちなんです。

──そういうことがわかっていてもミスをすることがあった?

 人の心を揺るがすような動きをすることもよくあるんです。買ってはいけないときには買いたくなるような動きをしたり、売ってはいけないときには売りたくなるような動きをしたり。この動きは怪しいなと思ってもつい惑わされてしまう(笑)。

──会社勤めだと株式市場が開いている時間、ずっとチャートを監視しているわけにはいきませんよね。となると株価の動きの裏を読むといっても難しいのでは?

 おっしゃる通りです。やっぱりプロの投資家に比べたらハンディがあります。そういう意味では会社員投資家に短期トレードは向いていないといえるでしょう。

──ピーター・リンチが提唱する中長期投資のほうが向いている?

 それは間違いありません。よく仕事が忙しくて株式投資なんてできないという人がいますが、中長期投資であれば、毎日株価をチェックしなければならないなんてことはありません。実際、私も通勤のときや昼休みにスマホで株価の動きを確認したりはしますが、家に帰ってから証券会社の口座にログインすることは滅多にありませんし。昼間忙しいサラリーマン、子育てに忙しい主婦でも、まったく問題ないと思います。

人が目をそむけるような不人気な業種の銘柄を狙う

──ほかにピーター・リンチから学んだことはありますか?

 彼は「気のめいるような不人気な業種、環境が悪い業種は、他人が買いたがらない分、株価が割安に放置されやすい」と言っています。普通はその時代の花形である業種や将来有望とされる業種の銘柄に目がいきがちですよね。最近だとAI関連とかロボット関連とか。でも、彼はそういう銘柄はみんなが欲しがるので、どうしても割高になる。それよりも人が目をそむけるような不人気な業種の銘柄は割安、つまりその会社の本来の実力よりも安い値がついていることが多いので狙い目だというわけです。

──たしかにそうかもしれませんね。

自分の勤務先企業のジャンルなら他の人が見つけられない目玉銘柄も見つかる可能性が高い。「私も、自分の勤務先の嫌なライバル社(笑)の動向をチェックしています。買おうかな、と思う企業を見つけたら、その企業だけでなく、同業他社の動向や業界全体の流れ、狙った企業の業界内の立ち位置なども調べてみてください」

 でも、あえて人が敬遠するような業種の銘柄を狙うのも有効な手立てだと思います。

──実際、エナフンさんはどんな銘柄を買ったのですか?

 リーマン・ショック直前に再開してすぐに買ったのが、名古屋を拠点とする葬儀会社、ティアの株です。当時、急成長していたのですが、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が低く、割安なまま放置されていました。それで、ピーター・リンチだったら絶対目をつけるだろうと思って購入したら、その後、株価が急上昇しました。その頃、葬儀を仕切る納棺師を描いた映画『おくりびと』がヒットして、葬儀業界に注目が集まっていたんです。それが株価上昇を後押しするという幸運にも恵まれました。

──たしかに「葬儀会社」の株は盲点かもしれませんね。

 そう、だからかなり割安だったんです。

──人と違う目線で考えることが大事ということでしょうね。あとは何かありますか?

 もうひとつ、ピーター・リンチは「自分の身近なところで探すべき」だといっています。例えば趣味が食べ歩きだとしますよね。そうしたら当然、今どこの店が流行っているかとか、大行列ができているかとか、詳しいわけじゃないですか。それは大きな強みであるわけですから、その知識を生かしてフード業界でどこが有望なのかを考えてみればいいんです。実際、私はトンカツが大好物で、かつて低価格のトンカツ専門店「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスの株で、大儲けさせてもらいました。この会社は多店舗化によって利益を大きく伸ばし、それにともない株価が底値から20倍に上昇したんです。

──自分が興味や関心を持っていて、他人よりも詳しい分野があったら狙い目だということですね。とすると働いている業種や業界で探すのもいいのでは?

 もちろんです。自分が働いている業界の動向に関しては、一般の投資家よりはるかに詳しいはずですから、大きなアドバンテージになります。

──会社に業界誌などが置かれていたら、そういうのを読むクセをつけるといいかもしれませんね。

 そうですね。業界誌にはA社が新技術を開発したとか、B社の新規事業が順調だとかそういう記事が満載ですからね。一般の経済新聞のように多くの人に読まれているわけではないので貴重な情報を入手できる可能性があります。あと、自分が働く業界でこれまであまり聞いたことのない会社が台頭してきたとか、急激にシェアを伸ばしているといった噂を聞くことがあると思います。そういう場合もライバル会社として敵視するのでなく、投資先として検討してみるといいでしょう。

──自分の仕事がらみで投資先を探せるのはサラリーマンの強みですね。

 そう、だからその強みを最大限生かしてほしいと思います。

──後編では、近況や今後についてお伺いします。

 

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