東京市場のコモディティ価格は海外価格とドル/円の影響を受ける

 超大型連中に休場となる東京の商品先物市場(TOCOM:東京商品取引所)の原油価格について考えます。

 私たちが普段、テレビや新聞、インターネットで最も頻繁に目にする原油価格といえば、世界の原油価格の指標であるWTI原油先物価格です。TOCOMの原油価格は、中東産ドバイ原油を円建てにして指数化したものですが、WTI原油との高い連動制が確認できます。

図:TOCOM原油先物価格とWTI原油先物価格

出所:TOCOMとCMEのデータより筆者作成

 おおむね、値動きの山と谷は同じです。全く一致した値動きにならないのは、通貨の単位が異なるためです。WTI原油先物はドル、TOCOMの原油は円建てです。世界の指標であるWTI原油価格と、TOCOMの原油価格の間には、ドル/円相場が介在しています。

 先述のとおり、ドル高は、ドル建ての商品にドル以外の他の通貨建ての同商品に比べた割高感が生じ、ドル建て商品の価格の下落要因に、逆にドル安は上昇要因になります。一方、この時、(ドル高)円安であればTOCOM原油には上昇要因、(ドル安)円高であればTOCOM原油には下落要因となります。

 TOCOM原油は、基本的には世界の指標となる原油に追随しますが、ドル/円の動きがその追随の仕方に強弱を与える、というイメージです。WTI原油価格が上昇している時、ドル/円が円高方向に進んでいた場合、TOCOM原油はWTI原油ほど上昇しない(円高の度合いによっては逆に下落する場合もある)こともあります。

 今回の超大型連休の、4月29日(月)から5月6日(月)まで、TOCOMは休場になります。この間、WTI原油とドル/円は土日を除き休みなく動きます。

 WTI原油とドル/円が、TOCOMの休場前と休場明けの時点でいくらをつけるかで、休場明けのTOCOM原油の価格が休場前に比べていくら高くなりそうか、あるいは安くなりそうかの目安を知ることができると考えます。

 以下の資料は、4月27日(土)午前5時30分(TOCOM原油の休場直前)に比べて、5月7日(火)午前8時45分(TOCOM原油休場明け)に、WTI原油(横軸)とドル/円(縦軸)がどれだけ変化すれば、休場明けのTOCOM原油が休場前に比べてどれだけ変化するのかの目安を示したものです。

 4月27日(土)午前5時30分時点で、WTI原油が64ドル/バレル、ドル/円が112円/ドルだったと仮定しています。ご注意ください。

 

図:WTI原油とドル/円の値動きとTOCOM原油の変化の目安

出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)などのデータをもとに筆者作成

 

 休場前に比べてWTI原油に変動がなかったとしても、ドル/円が3円ドル安・円高に振れていれば、TOCOM原油は休場前に比べて1,000円以上下落して取引が始まる計算になります。

 また、WTI原油が3ドル上昇、ドル/円が3円ドル高・円安に振れれば、TOCOM原油は休場前に比べて3,000円以上上昇して取引が始まる計算になります。

ガソリン小売価格は“WTI原油”から数週間遅れで動く

 ここからは、ガソリン小売価格とWTI原油価格の関係に注目します。私たちが日常生活の中で使うガソリンや灯油は、中東から輸入した原油を精製して作られたものですが、新聞やテレビ、インターネットで目にする「国際指標」としてはWTI原油が主となるため、本レポートでは、ガソリン小売価格とWTI原油先物価格を比較します。

図:レギュラーガソリン小売価格(税込)とWTI原油価格の推移

出所:資源エネルギー庁およびCMEのデータより筆者作成

 昨年(2018年)10月上旬から12月末にかけて、原油価格は急落しました。その後、反発して今に至っています。日本のガソリン小売価格も下落し、反発しているわけですが、下落が始まったタイミング、反発したタイミングに数週間の時間差があります。

 中東産原油価格とWTI原油価格は、ほぼ時間差なく、同じような山と谷を描いて推移しているため、中東産原油とガソリン小売価格を見比べてみても、同じように数週間の時差が生じます。

 輸入や精製、店頭への輸送などにかかる日数が時間差の一因とみられます。このため、WTI原油価格が上昇(下落)に転じたため、直ちにガソリン小売価格が上昇(下落)に転じることはないといえます。

 4月9日(火)以降、WTI原油価格は、1バレルあたり64ドルを挟んだ小動きとなっています(4月22日午前時点)。横ばいになって2週間が経過しようとしていますので、数週間の時差がある点を踏まえれば、そろそろ、ガソリン小売価格の上昇が止まり、横ばいになる可能性があります。