キャッシュレス前提のスマートシティー「アリババパーク」

 アリババは中国政府から「AI×スマートシティー」事業推進を受託しています。杭州にあるアリババパーク周辺は、アリババ本社、アリババ初のリアルで最先端の商業施設、アリババ初の近未来型AIホテル、アリババ社員の住居などから構成されており、キャッシュレスを前提としたスマートシティーの様相を呈しています。住居の屋上にはクリーンエネルギーを発電するための太陽光パネルがありました。

 私は、アリババパーク自体がリアルなプラットフォームやエコシステムを形成し、中国における近未来の都市デザインの象徴となっていく可能性をそこに感じ取りました。「中国のシリコンバレー」を目指す杭州の中において、その中核を担うのがアリババが本拠地を構え、アリババパークを展開するエリア「未来科技城」です。未来科技城に1,000社以上のスタートアップ企業やこれらの企業の支援を行うアクセラレーターが集結していることも、中国が描く理想都市としての存在感を高めています。

アリババ初の商業施設「親橙里」

 アリババ本社とホテルの中間に位置しているのが、2018年4月にオープンしたアリババ初の商業施設「親橙里(チンチェンリー)」です。ここでは、キャッシュレス決済、自動化・無人化サービスの展開、アリババのECショップのリアル店舗展開、テクノロジーを活用した店舗展開などを目の当たりにしました。

小売りスーパー「盒馬鮮生(フーマー・フレッシュ)」。決済はスマホで完結。

 地下1階には最新鋭の新しい小売りスーパー「盒馬(フーマー)」が陣取り、キャッシュレスでのリテール体験を提供しています。さらに、施設内には無人カラオケルーム、無人休憩スペース、レンタルミーティングスペースがあり、キャッシュレス前提の多数の自動販売機も設置されています。最上階の映画館はキャッシュレス及びチケットレスでの自動ゲート入場式です。

 アリババのECショップのリアル店舗においては、ホテルの客室内でも使われていたアリババの音声認識AIアシスタントを搭載した、「ただ話しかけるだけ」で稼働する様々なIoT家電が実際に販売されていました。

 アパレルショップにおいては、画像認識で顧客のアバターが作成され、そのアバターを使って様々なコーディネートが提案される端末「バーチャルフィッティングシステム」もありました。その端末から、アリペイを使って気に入った商品を購入することも可能です。店舗からは、売れ筋商品の情報がアリババの動画サイトを通じてライブストリーミング配信されていました。商品を様々な方法で消費者に紹介するとともに、様々な方法で購入することが可能になっているのです。

バーチャルフィッティングシステムで試着&コーディネート

 今回の滞在では、アリババも出資するDiDi(ディディ)のライドシェアを移動手段として活用しました。これらのサービスを体験してみると、スマホでのキャッシュレス社会をいち早く実現したアリババの「前人未踏の領域を開拓している」という強い自負心、さらには「スマホすら不要とするIoT決済や顔認証決済に本格的にシフトしていこう」とする気概も感じました。