3月25日~29日 原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は上昇。世界的な景気減速への懸念、米国の原油在庫の予想外の増加などが上値抑制要因となる一方、石油輸出国機構(OPEC)らの協調減産、米国の制裁措置によるイランやベネズエラからの供給減少などが支援材料となり、強弱材料まちまちから決め手を欠いた展開が続いた。ただ、週末に需給面でのプラス要因が散見されたため、60ドルを上抜いて取引を終えた。
前々週末の欧米の製造業関連指標の悪化を受け、世界的な景気減速への懸念が高まっている。米債券市場では3ヶ月物利回りが10年物を上回り、利回り曲線(イールドカーブ)は約12年ぶりに逆転した。逆イールドは一般的に景気後退のシグナルとされ、投資家心理の冷え込みからリスク回避の動きに拍車がかかった。株価下落に連れてリスク資産の一角とされる原油も売りが優勢となった。景気減速に伴い原油需要が減退するとの見方も売りを誘った。米国の原油在庫が予想に反して増加したことも売りにつながった。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫は前週比280万バレル増と、事前予想(120万バレル減)に反して積み上がった。輸入量は引き続き低位で推移しているが、この週はリファイナリーの稼働が停止したうえ輸出が減少したため、需要面の減少から在庫が増えた。
一方で強気の材料もある。需給均衡に向けて主要産油国が前向きな姿勢を崩しておらず、OPEC主導の協調減産は少なくとも6月末まで続くとの見方が強い。また、協調減産が履行されるなか、米国の制裁措置に伴いイランやベネズエラからの供給量が減少している。ベネズエラに関しては、2回目となる大停電に見舞われており、石油輸出ターミナルなどが麻痺状態に陥っている。国際エネルギー機関(IEA)は同国の石油産業は崩壊の危機に瀕していると警告していたが、今回もまた送電網も脆弱さを露呈した格好で、供給減少の長期化および減少幅の拡大が懸念する向きが多い。
これらブルベア要因が交錯したため決定打を欠き、市場は方向感を失った状態が週末まで続いた。しかし、週末には強めの材料が見られたため、WTI期近5月限は一時60.73ドルまで上昇し、期近ベースとしては約4ヶ月ぶりの高値を付けた。米国がイラン産原油禁輸措置に対して制裁を強化するとの一部報道があったほか、EIAが発表した月次の統計で、1月の米国産原油の生産量が前月から減少したことが明らかとなり、これらを受けて需給均衡に向かうとの期待が高まった。引けにかけて上げ幅を削ったが、久しぶりに60ドル台で取引を終えている。逆イールドにあることや、英国のEU離脱問題など不透明感があるため、投資家心理が抑制されやすい状況にあるが、米中通商協議が順調だったとの報もあり、投資家心理は幾分改善傾向に向いている。また、これら先行きの思惑に対して供給面は実際に減少しているため、底堅さに分があるだろう。