老齢期の運用管理の選択肢はどうあるべきか

 前回は、老後資金準備について「100年人生」の課題を整理してみました。今回は受け取り時期の取り扱いについてポイントをみてみます。

 現役時代になんとか資金準備をぬかりなく進行できたとしても、引退後の資産管理にも困難は待ち受けています。やはり「長すぎる老後」だからこそ生じる問題です。

 仮に引退後の期間が30年あったとすれば、インフレ等の影響を避けることは難しいでしょう。ここ数十年間に引退した人は、低金利が続いていたとはいえインフレによる実質価値低下について心配することもない幸運な期間であったといえます。

 しかしこれからの30年後、あなたがリタイアする時点から30年先までが低インフレ→デフレだと予想するのは、いささか楽観的に過ぎます。そうなると、インフレをカバーする程度の資産運用は意識しなければなりません。

 とはいえ、30年先を視野に入れるのはあまりに長すぎる運用期間です。30年の資産管理を考えると、マーケット急落のリスクも避けられません。小規模な下落も10年に2度は起こるでしょうし、大規模な急落にも1度は巻き込まれる可能性もあります。そのため、適切なリスク管理が重要になります。

 資産の時価が大幅に減少するリスクを勘案して、リスクをあまり取りたくない(高齢期は市場の回復をのんびり待てない可能性がある)ことを思うと、高い期待リターンを設定した運用方針もとりづらくなります。

 仮に、資産の半分を投資継続し、半分を預貯金にするとします。これは投資資金分でインフレを少々上回る程度リスクを取り、全体としてインフレに追随させ、かつ資産急落時の影響を投資資金の半分に留める、というコントロールをしたことになります。

 

金融老年学(ジェロントロジー)の成果はどう織り込むか

また、徐々に自らの判断能力が低下することも受け入れなければなりません。

 この手の話題は「金融老年学(ジェロントロジー )」として、しばしばメディアでも取り上げられるようになりました。

 2018年2月に閣議決定された「高齢社会対策大綱」においても、「金融老年学(ファイナンシャル・ジェロントロジー)」※1)という言葉が出てきました。例えば、計画性を持って「健康寿命」と「金融資産の寿命」をバランスよくする運用管理や課題など、いくつかのテーマが議論されました。

 また、加齢による認知能力の低下に対応して資産管理をどう行うかも課題とされています。基本的には適宜、安全資産へシフトしていくことがポイントとなりますが、信託あるいは投資一任などで運用を代行させていくことも考えられます。

 さて、この様な条件をふまえつつ、今回は「受け取り方法」について選択肢を示してみましょう。

 

※1)データ出所:金融庁「平成30事務年度金融行政方針」などにおいて
「高齢社会における金融サービスのあり方の検討」を項目として掲げ、「フィナンシャル・ジェロントロジー(金融老年学)をふまえた投資家保護のあり方等について議論を行い、顧客の状況やニーズを起点としたビジネスモデルの転換や非金融分野との連携等、金融業界が取り組むべき方向性と顧客が留意すべき事項についての原則等をとりまとめる。」としています。