リタイア前後の+-5年のリスクコントロールが最初のカギ
まず、資産管理の具体的な論点を考えると、「リタイア前後5年」のリスク管理がポイントになります。というのは、リタイア直前の急落、リタイア直後の急落は、その後の数十年に大きく影響を及ぼすことが避けられないため、資産運用のソフトランディングを意識していくことが重要になるからです。
老後資産形成において、その取り崩しをスタートする直前にリーマン・ショック級の市場の急落に遭遇した場合、資金額が最も高まっている時期だけに、金額的インパクトが大きくなります。仮に3,000万円のリスク資産運用をしていて30%の下落が生じると、時価ベースで2,100万円まで急落します。
一時的なものとして考えても金額的には含み損が大きく、その回復にある程度の時間を要します。過去の例でいえば5年くらいは考慮しておく意識が欲しいところですが、高齢期にこれは、なかなか焦りを覚える年数です。
仮に65歳をリタイア年齢とした場合、老後資産形成した資金について60歳から65歳の時点でその一部を安全運用にシフト、かつ65歳から70歳までの時点でもう一段階シフトすることができれば、市場急落の影響をかなり回避することができます。あるいは、セカンドライフ前半戦は優先的に安全資産を取り崩し、リスク資産の保有分は回復を待つという戦略もとれることになります。
中長期に老後資産形成を行ってきた場合、マーケットの急騰・急落を何度か経験してきているはずですから、「これが自分にとって最後の上昇相場かも」ということを50歳代後半から60歳代にかけて理解することができると思います。
どの程度リスク資産ウエートを落とすべきか、その時点で考えていくことになります。個別に判断するべき問題ですので、一律に「投資比率半減→さらに半減」のように申し上げることはしませんが、年金生活スタート時点での投資割合をイメージし、そこに近づけていくように考えるといいでしょう。
ただし、セカンドライフのスタート=全額預貯金にする必要はありません。セカンドライフは長く、先に述べたとおり、ある程度リターンを得る要請もあるからです。また個人の運用能力も衰えていないでしょうから、判断能力があるなら投資比率を維持してもかまいません。
具体的な方法としては「単純に預金残高を増やす(売却)」方法と「リスクの低い商品に振り替える(株式投資から国内債券へ)」方法がありますが、どちらを選択するかは好みとして考えればよいでしょう。