2月25日~29日 原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は反落。トランプ米大統領の原油価格上昇を嫌った発言を受け売りが先行して始まった。米中通商協議の行方に対する楽観や需給引き締まりへの警戒から切り返し、WTI期近4月限は57ドル台で高止まりする動きとなっていたが、週末に利食い売りに押されて再び軟化した。

 週明けは売りが先行した。トランプ米大統領の原油価格に対する牽制ツイートが下げた要因。同大統領は、これまでにも原油価格上昇やOPEC(石油輸出国機構)の産油政策に対して幾度となくツイッター上で不満をあらわにしている。今回は「Oil prices getting too high. OPEC, please relax and take it easy. World cannot take a price hike - fragile!」とツイートしており、油価下落を所望するとともに、協調減産を実施しているOPECの政策に対して牽制したことは明白である。この発言を受けて市場は売りで反応、直近に約3カ月ぶりの高値を付けていたこともあり、一旦利益を確定する動きが強まった。

 しかし、その後は買い優勢から小確りとした展開が続いた。先のトランプ米大統領の不満に対し、サウジアラビアのファリハ・エネルギー鉱物資源相は、「落ち着いている、気楽に受け止めている」と述べ、牽制を受け流した。同国は3月にさらなる減産を公約しており、協調減産の順守および継続により需給バランスは均衡に向かうとの見方が強まった。イランやベネズエラからの供給不安も残っており、これらを好感した買いが下値を支え、節目の55ドルでサポートされた。そこへ米国の原油在庫の予想外の減少が明らかとなり、前々週の高値水準である57ドル台を窺う展開へと転じた。

 EIA(米エネルギー情報局)が発表した週間石油統計によると、米国の原油在庫は増加予想に反して800万バレル以上の減少となった。原油生産量は前の週に続き過去最高を更新、これは弱材料ではあるが、原油輸入量の大幅減少を市場は買い材料視した。サウジアラビアの出荷減と制裁に伴うベネズエラからの輸入減が影響したとみられ、輸入量は実に23年ぶりの低い水準に落ち込んだ。これにより在庫は予想外の取り崩しとなった。この2カ国からの米国の原油輸入比率は2割近くを占めており、米国の低輸入状態はしばらく続くことで、在庫減少を強いられる可能性がある。

 米国の牽制に対してサウジアラビアが示した姿勢は強気。そのサウジアラビアからの輸入が落ち込んだことで米国の原油在庫は減っている。この先もサウジ産原油の米国向け供給は低迷、過剰供給状態にある米国の原油需給バランスも改善方向へ向かうといった見方が広がっている。また、米中貿易戦争に関しても両国に溝があるとはいえ、米国側は3月2日に予定していた追加関税率引き上げについて期限を定めず延期することを明らかにしており、最悪の事態は免れている。これらを総合的に捉えると、価格上昇はもっともであると判断せざるを得ないところだが、実際の市場のセンチメントはそこまで強気に傾いていない。

 ベアな要因がやや緩和しただけで、需給はそこまで引き締まらないとみる市場参加者が多いのかもしれない。足元でレジスタンスとなっている58ドルを上抜くまでは、市場のムードは弱気に振れやすいと考えておくべきだろう。

 

今週の予想

  • WTI    やや強め 53.00-58.00ドル
  • BRENT    やや強め 62.50-67.50ドル