2.セグメント別動向:ゲーム&ネットワークサービス

 ゲーム&ネットワークサービスの今3Qは、売上高7,906億円(前年比10.1%増)、営業利益731億円(同14.4%減)となりました。日米欧のクリスマス商戦で前3Qよりも積極的な販売促進を行いました。期間限定のプレイステーション4(PS4)ハードの値下げ(日米欧で実施、北米で50ドル、日本で5,000円値下げ)、PS4Proの値下げ(日本で5,000円の値下げ(希望小売価格の値下げ))や、期間限定で日米欧のPS4ハード購入者に対するソニー製ソフトの無料ダウンロードの配布を行いました。

 この拡販策によって、ゲーム&ネットワークサービスの今3Qは、前述のように14.4%営業減益となりました。ただしPS4ハード販売台数は、前3Q900万台→今3Q810万台と減少はしたものの、発売後5年を経過したハードとしては好成績を挙げました。今回の拡販の主目的はハードの累計販売台数の拡大でしたが、会社側ではこの目的は達成されたと考えています。

 PS4用ソフトは前3Q8,650万本から今4Q8,720万本へ0.8%増となり若干ながら伸びました。ソニー製大型ソフトがない中で健闘しました。

 また、アドオンソフト(追加ダウンロードソフト)が好調で業績に寄与したもようです。特に、「フォートナイト」(エピックゲームズ)のアドオンソフトが好調でした。

 会社側は今3Qの営業減益にもかかわらず、ゲーム&ネットワークサービスの通期業績見通しを変更していません。会社予想では今期は売上高2兆3,500億円(前年比20.9%増)、営業利益3,100億円(74.6%増)の見込みです。PS4ハードは2017年3月期に2,000万台でピークを打ち、2018年3月期1,900万台、2019年3月期1,750万台と減少トレンドにありますが(グラフ2)、同ソフトはグラフ3のように今期まで増加が続いており、サードパーティ製ソフト、ソニー製ソフトともに業績に貢献しています。今4Qは1月に「バイオハザードRE:2」(カプコン)、「キングダムハーツⅢ」(スクウェア・エニックス・ホールディングス)、2月に「ファークライ ニュードーン」(Ubiソフト)、「アンセム」(エレクトロニック・アーツ)、3月に「デビル メイ クライ5」(カプコン)などの大作ソフトが発売されるため、今4Qも高水準の業績が期待できます。

 来期2020年3月期はソニー製ソフトの「デイズゴーン」(4月)、「ゴースト オブ ツシマ」(発売日未定)が発売されると思われます。また、「デス・ストランディング」「ザ・ラスト・オブ・アスPART2」が来期または来々期に発売されると予想されます。これらの自社製ソフトの寄与で来期は営業利益横ばいと今期並みの高水準の利益が予想されます。ただし来々期(2021年3月期)になると、PS4用ソフトも下降サイクルに入る可能性があり、そのため、減益になる可能性があります。

グラフ1 ソニー・ゲーム&ネットワークサービス事業の売上構成

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ2 ソニーのゲームサイクル:プレイステーションの販売台数

単位:万台
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

グラフ3 ソニーのPS4用ゲームソフト販売本数

単位:万本
出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券
注:追加ダウンロードソフトを除く

 

3.セグメント別動向:音楽、映画

音楽:売上高2,094億円(前年比4.1%減)、営業利益1,471億円(同3.7倍)となりましたが、前述のようにEMI連結子会社化に伴う再評価益1,169億円を除くと実質営業利益は302億円となり、実際には23.2%減益となりました。主な要因はスマホゲーム「Fate/GrandOrder」の課金売上高減少です。「Fate」は実際にプレイするユーザーは減少していないものの、今3Qは前3Qのような大掛かりなイベントを行わなかったため、課金売上高が減少したもようです。また、音楽出版はEMI子会社化によって売上高が増えましたが、音楽制作は前3QのPink、Chris Brownのような大型タイトルが少なかったため減収となりました。

 今通期でも一時利益を除く実質ベースでは営業減益となる見込みです。

 2020年3月期、2021年3月期は緩やかな減益傾向が予想されます。「Fate」は現在第2部「コスモス イン ザ ロストベルト」が配信されていますが、今のところこれが最終章となる見込みです。この場合、各種イベントで盛り上げたとしても、課金売上高は傾向的に減少すると思われます。「Fate」が含まれる「映像メディア・プラットフォーム」売上高の四半期推移を見ると、頭打ち感が出ています(グラフ4)。

 スマホゲーム以外の音楽制作、音楽出版について見ると、音楽出版はテレビ、映画に加えてネットでも著作権販売の機会が増えているため、傾向的に増収が期待されます。音楽制作売上高はアーティストの作品の出来具合に左右されるため、今後も変動が予想されます。

グラフ4 ソニー・音楽事業の売上構成

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

映画:今3Qは売上高2,767億円(前年比6.3%増)、営業利益116億円(10.5%増)となりました。映画事業は再建中ですが、2017年12月公開の「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」からヒットが続いています。今3Qも「ヴェノム」「スパイダーマン:イントゥ ザ スパイダーバース」がヒットしました。再建は軌道に乗っていると考えてよいと思われます。テレビドラマも「ベターコールソウル」のようにシーズン4になるシリーズも出ています。

 今期は会社側は営業利益500億円(前年比21.7%増)を予想しています。映画事業は、今後も増益が続くと予想されます。同業他社の多くが年間1,000億円以上の営業利益を上げていることを見ると、ソニーにもその可能性があります。映画は重要な事業になっていくと思われます。