ファーウェイ・ショックで、貿易戦争が緩和に向かう期待が消え去る

 逆イールド・ショックでNYダウが急落した直後、12月5日に飛び込んできたのが、中国の通信機器大手ファーウェイのナンバー2孟晩舟副会長が、カナダで米国の要請により逮捕されていたニュースです。これで米中貿易戦争がさらにエスカレートする不安が強まりました。

 12月1日の米中首脳会談直後、貿易戦争はいったん休戦となり、融和に向かう期待が出ましたが、その期待は消え去り再び不安が高まっています。

 米中首脳会談で、貿易戦争の休戦に向けての合意があったと見られていましたが、その後の両国の発表を聞く限り、合意にはまだ遠いと考えられるようになりました。

 ファーウェイ社の孟副会長が、米国の要請で逮捕されたのは、首脳会談があった12月1日でした。逮捕の容疑は、米国が経済制裁を実施しているイランへ、不正に輸出を行っていたことです。今後、中国の通信大手ZTE社と同様に、ファーウェイ社に対しても、さまざまな制裁が課せられると考えられます。これで米中の合意がさらに難しくなりました。

 米国政府は、この件について、「ファーウェイ副会長の逮捕は、安全保障上の問題から行ったことで米中通商交渉とは別」とコメントを出しているが、ハイテク戦争が激しさを増し、通商交渉の合意が難しくなっているのは事実です。

 米国政府の意向を受けて、既に、オーストラリア・ニュージーランド政府がファーウェイ製品の締め出しに動いており、日本も名指しはしないものの、実質的にファーウェイやZTEを政府調達から閉め出す方針を発表しました。こうした一連の動きを受けて、日本では、ファーウェイと取引のある半導体や電子部品株、ファーウェイ製の通信機器を使っているソフトバンクGの下落率が大きくなりました。

 

11月の米雇用統計はやや市場予想より弱いが、引き続き雇用は好調と言える内容

 11月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者増加数(前月比)が15.5万人増と、事前予想の20万人増を下回り、やや弱い内容でしたが、失業率が3.7%と低水準にあり雇用が強いとの見方は変わりません。注目された平均賃金上昇率(前年比)は3.1%で、3%を超えた状況が続いていますが、特にサプライズはありませんでした。