「逆イールド・ショック」で、4日のNYダウが急落

 5日(水)のNY市場は休場でしたが、4日(火)にNYダウが前日比799ドル(3.1%)安の2万5,027ドルと急落した余波で、世界的に株安が広がっています。4日のダウ急落を引き起こしたのは、米国債の「逆イールド・ショック」と、米中貿易戦争への不安でした。

 ところで、「逆イールド」って何か、ご存じですか? 逆イールドとは「利回り逆転」のことです。長い金利は、短い金利よりも、高いのが普通です。時に、短い金利が長い金利よりも高くなることがあります。それが利回り逆転、逆イールドです。

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米国の10年、5年、3年、1年、3カ月金利の日次推移:2018年1月2日~12月4日

 

 4日、米国の5年債利回りは2.790%まで低下し、3年債利回り2.805%よりも低くなりました。5年金利が3年金利より低いわけですから、そこで、逆イールドが起こったわけです。逆イールドは、先行き、金利が低下すると金融市場が織り込みはじめたことを意味し、「景気悪化の予兆」と言われます。それが、米国株の売りを誘発しました。

 今年は、9月までで0.25%の利上げが3回ありました。さらに、12月19日にもう1回0.25%の利上げがあるのが、ほぼ確実と見られています。短期金利(3カ月)は、今年は利上げを織り込んで一貫して上昇しています。ところが、長期金利は、短期金利ほど上昇していません。10年金利は、4月に3%に達してから、上昇していないのです。5年、3年金利も、少しずつ上値が重くなっています。その結果、長い金利と短い金利のスプレッド(差)が縮まってきています。

 そして、5年、3年金利の間で、12月4日にとうとう逆イールドが生じたわけです。それを嫌気して、NYダウが大きく下がりました。

 

米10年金利が3%を超えて上昇する気配を見せると、株売りに

 今年は2回、米長期(10年)金利上昇ショックで、世界株安がありました。1回目は2月、2回目は10月です。2月は3%に接近、10月は3.2%に達したところで、NYダウが急落し、世界株安につながりました。

米長期(10年)金利の日次推移:2018年1月2日~12月4日

 

 今年最初の「金利上昇ショック」は、2月2日に発表された1月の米雇用統計がきっかけで起こりました。平均賃金上昇率が3%に近づいていることがわかり、インフレ懸念が高まり、米長期金利が3%に向かって上昇しました。

 ここで、金利上昇や株式市場のボラティリティ(変動性)上昇をトリガー(ひきがね)とした株のプログラム売りが一斉に発動され、世界的に株が急落しました。日経平均株価も、外国人の売りで急落しました。

 ただし、プログラム売りが一巡すると、それ以上、積極的に売る向きはなく、株は下げ止まりました。その後、「米長期金利、3%」という数字に、株式市場は耐性を示すようになりました。「米長期金利が3%でも、株式市場にとって悪材料とはならない」との見方が広がり、世界的に株が反発しました。

 ところが、10月に入り、長期金利が3.2%をつけたところで、再び、NYダウが急落し、世界株安につながりました。3、6、9月に利上げした上、さらに、12月にも米利上げが見込まれることから、再び金利上昇への不安が高まったのです。

 ただし、株が急落すると世界景気の先行きに不安が広がります。そうなると、長期金利の上昇は止まります。そして、またゆるやかに低下を始めます。10月の長期金利上昇ショックのあと、米長期金利は順調に低下し、3%を割れるところまで、下がってきました。これで、目先、金利上昇不安で株が売られることはなくなったと思われた矢先、今回の逆イールド・ショックが起こりました。