11月最後の週末となった30日(金)の日経平均は、2万2,351円で取引を終えました。前週末終値(2万1,646円)比では705円高となり、週足ベースでも3週ぶりの上昇に転じています。

 前回のレポートでは、「相場の地合いは堅調ながらも、米中首脳会談を控えて値動きの振れ幅が大きくなる可能性に注意」としました。当初のイメージとしては、株価が上にも下にも荒っぽく動く展開を想定したのですが、終わってみれば、下方向への動きは見られず、上方向への意識が目立つ結果となりました。

 クリスマス商戦の順調な滑り出しをはじめ、米中首脳会談に対する過度な警戒が後退したこと、米国の金融政策(利上げペースの打ち止め感)期待などが好感され、米国株市場が上昇基調を描いていたことが日本株にとっても追い風になった格好です。

 ちなみに、前週末からの上昇率は、日経平均が約3.2%、米NYダウは約5.1%となっていて、株価上昇の勢いに少し差が見られます。実は、この差が今後の値動きを予想していく上で重要な鍵になるかもしれません。

 その点について具体的に見ていく前に、まずは下の図1で足元の状況から確認です。

■(図1)日経平均(日足)の動き(2018年11月30日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDを元に筆者作成

 

 冒頭でも触れた通りですが、先週の日経平均は大きく上昇し、先週末時点で6連騰しています。移動平均線との関係についても、25日移動平均線を上抜けし、さらに200日移動平均線水準まで株価を回復してきており、順調な戻りを印象付けています。

 あとは、直近高値(11月8日の2万2,583円)や、75日移動平均線、2万3,000円などの節目を突破できるかが今後のポイントになるわけですが、下の図2は、25日移動平均線を中心とした日経平均(日足)のエンベロープです。

■(図2)日経平均(日足)のエンベロープ(2018年11月30日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 エンベロープについてはこれまでのレポートでも何度か取り上げましたが、ここ数年間の日経平均を見ると、通常時で±3%、強い相場が現れた際には±6%が目安になる傾向がある点について紹介しました。

 先ほど述べたポイントと重ね合わせてみると、+3%が75日移動平均線、+6%が2万3,000円の水準とほぼ一致しており、エンベロープの視点からも75日移動平均線や2万3,000円が意識されやすいことを示しています。

 ここで、あらためて話を図1に戻しますが、注目するのは、11月13日と21日、そして29日の3日間の取引です。

 13日と21日については、前回のレポートでも指摘した通り、日本株が米国株市場の急落を受けて下落スタートだったものの、中国株の堅調さを受けて持ち直した日です。ローソク足の形も下ヒゲの長い陽線や大きい陽線となっていて、引けにかけて買いが優勢だったことを示しています。両日の日本株は、「米国株からの軟調ムードで下落した後、中国株の堅調ムード」によって支えられる展開でした。

 反対に、29日のローソク足を見ると、こちらは陰線で、終値が200日移動平均線を下回っている形になっています。この日の取引は、米NYダウが前日比で600ドルを超える大幅上昇を見せ、日経平均もこの流れに乗って大きく上昇していたのですが、下落に転じた上海総合指数が重しとなり上げ幅を縮小させました。今度は、「米国株から引き継いだ良好なムードに中国株が水を差した」展開だったわけです。先ほど指摘した、前週末からの上昇率で日経平均はNYダウほど上昇していない理由はここにあると思われます。

 今週は、大注目だった米中首脳会談のイベント通過を受けて始まります。具体的な内容については、他の分析記事に譲りますが、少なくとも、交渉が破談して貿易戦争が激化してしまうのを回避できたことと、2,000億ドル相当分の中国製品に対する関税率の引き上げを90日間猶予して時間を稼いだことについては好感されると思われ、週初は上昇スタートが見込まれます。

 もちろん、先週の株価上昇が米中首脳会談への期待を織り込んできた面についても配慮する必要がありますが、米国株に比べた日本株の出遅れは、別の見方をすれば米国株ほど期待を織り込んでいないと考えることもでき、心理的にも相場を支えそうです。

 最後に週足チャートも確認していきます(下の図3)。

■(図3)日経平均(週足)の動き(2018年11月30日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 

 移動平均線に注目すると、13週・26週・52週の3本の移動平均線が狭い間隔で並んでいることが分かります。

 今週の相場が堅調な展開が続き、形成されるローソク足がこれら3本の移動平均線を上方向に跨ぐ陽線となれば、上方向への意識が強まりやすい「3本抜け」と呼ばれるサインとなりますので、年末相場への期待が高まる形となります。さらに、米国の金融政策姿勢に対する期待や来週のメジャーSQの需給的な動きも加われば一段高となる展開もあり得そうです。

 ただし、米中首脳会談の結果は、米中関係が改善に向けて具体的に進展したわけではなく、90日間の猶予のあいだに、要人発言や思惑等が絡んでムードの好転と悪化が繰り返される可能性があり、積極的な買い材料になりきっていない点については注意が必要です。米中会談の結果を好感する買いの賞味期限が思ったよりも短くなったり、今週以降の株価上昇の勢いが大きいほど、その反動も警戒されることになると思われますので、中期的な株価上昇傾向に自信を持つためにはまだ時間が掛かるのかもしれません。