下落相場で高まる「過剰なリスクの回避」の動き

 でも、業績自体は好調にもかかわらず、株価が大きく下がってしまう高PER銘柄も最近増加しているのです。それが2つ目の理由である、「株式市場全体が下落相場に突入している可能性」です。

 アベノミクス相場や、世界的な株高の背景には、「過剰流動性」があります。過剰流動性とは、世界各国の政府が著しい金融緩和を行ったことによりマネーが株式市場にあふれ、それが株価を大きく押し上げることを意味します。

 過剰流動性が起こっている間、確かに企業業績も向上しました。それによる株価上昇という要素ももちろんあります。しかしそれ以上に、世界中でカネ余りの状態が続いたことにより、実態以上に株価が大きく買われたという側面が大きいのです。一言でいえば「バブル」です。

 すでに米国は、利上げなどにより金融緩和から引き締めにシフトしています。そうなると、投資家は今まで株式市場に投下されていた資金を、株式売却により回収します。この動きがさらに加速すると、株価は本格的な下落相場に突入していきます。

 上昇相場では、多少のリスクを取った方がより投資成果が上がります。そのため、高PERの成長株は、いわば「買うから上がる、上がるから買う」という好循環で株価上昇が続いてきました。上昇が続いている限りは、それでも特段の問題は起こらないのです。

 でもひとたび下落相場に転じれば、逆に株式へ投資することへのリスクを回避しようという動きが強まります。その中でも、高PERの銘柄は「買われすぎ」という判断が下され、株価下落が続いていくことになります。ですから、PERでみて30倍程度が適正水準、と投資家が判断すれば、PER100倍まで買われている銘柄の株価は単純計算で3分の1まで下落してしまうのです。

 

まとめ・高PER銘柄への今後の対処法とは

 このように、高PER銘柄が大きく値下がりしているという事実を私たち個人投資家も重要視する必要があります。つまり、今までとは逆の風が吹きはじめているということです。

 もともと高PER銘柄は非常に高い成長性が評価されていますから、業績の下方修正に対してはとても敏感に株価が反応します。今回の決算発表シーズンでも、高PER銘柄の株価があっという間に半値以下にまで下落したものをいくつも目撃しました。
 高PER銘柄が業績悪化により天井をつけて下落すると、株価は5分の1、10分の1になることも珍しくありません。

 したがって、高PER銘柄へ投資した場合、下降トレンドに転じたら即座に売却する必要があります。すでに業績がピークアウトした場合、含み損を抱えているからとそのまま保有を続けるのは極めて危険です。

 また、決算発表をきっかけにして株価が急落しているケースが目立ちますから、決算発表直前の新規買いは非常にリスクが高くなります。決算発表が終わり、株価が落ち着きを見せてから実際に投資するか判断するようにしましょう。

 アベノミクス相場が始まった2012年11月以降に株式投資を始めた方はあまりピンと来ないかもしれませんが、本格的な下落相場になれば、びっくりするくらい株価が値下がりします。そうなっても困らないように、今からしっかりと準備しておいてください。