米「ねじれ議会」に、日米株式は異なる反応

 米中間選挙の結果が判明しました。トランプ大統領の率いる共和党は、上院で過半数を維持しましたが、下院では野党・民主党が過半数を奪還。いわゆる、「ねじれ議会」になりました。野党が下院を抑えたことで、トランプ大統領の政策推進力には、一定の抑止力が働く見込みです。

 今回は、注目の高い中間選挙だったため、従来の中間選挙よりも高い投票率となりました。これまで投票に行っていなかった浮動票層に、民主党支持層が多かったため、投票率の上昇が民主党に優位に働いたと考えられます。

 今回の米中間選挙の焦点は、上院・下院とも過半数の議席を有する共和党が、それぞれ過半数を維持できるかでした。事実上、米国民によるトランプ大統領の信任投票と見られていました。事前の世論調査では、民主党が僅差で支持率でリードしていました。選挙結果は、ほぼ世論調査に基づく、事前の市場予想通りだったと言えます。

 この結果に対し、日米の株式は異なる反応を示しました。日経平均は前日比61円安の2万2,085円と小反落しました。一方、NYダウは、米中間選挙という重要イベントが、事前の市場予想通りの結果となった安心感から買いが増え、前日比545ドル高の2万6,180ドルと大幅続伸しました。

 NYダウが大幅に上昇したのを受け、今日は日本株にも買いが広がりそうです。

ねじれ議会のプラス・マイナス

 中間選挙で、上院下院とも共和党支配の状況が終わり、下院は野党、上院は与党が支配する「ねじれ議会」に変わりました。これには株式市場から見て、プラスとマイナスがあります。

 プラス面は、トランプ大統領の暴走に、一定の抑止力がかかること。イランや中国に対する強硬策に、一定の歯止めがかかる可能性があります。イランからの原油輸入禁止が緩和されれば、イラン産原油の供給減少に対する不安が低下し、原油価格の高騰を抑える要因となります。これは、世界経済および株式市場にプラス材料です。

 貿易戦争に与える影響は不透明です。対中国での強硬策は、共和党も民主党も大きな主張の差はないからです。それでも、対中制裁をエスカレートさせることには、一定の歯止めがかかる可能性があります。対中制裁が、米国経済にも悪影響を及ぼす不安が出始めていましたが、その不安はやや緩和されます。その思惑からか、7日の米株市場では、中国関連株の米キャタピラーが大きく上昇しています。日本やEU(欧州連合)に対する、通商面での強硬策がどうなるかは、不透明ですが、ドイツ国内からは、米ねじれ議会の選挙結果に、安堵の声が出ています。

 株式市場へのマイナス面としては、トランプ大統領がさらにやろうとしていた景気刺激策が、やりにくくなることが挙げられます。トランプ大統領は、米中間層への減税や、公共投資の積み増しを示唆していました。これは、下院を押さえた民主党が、財源がないことを理由に認めない可能性が高いと考えられます。ただ、それで人為的に米景気を過熱させることなく、ゆるやかな景気拡大が続くとの見方もあります。

 もう一つ想定されるマイナス材料は、米ロ関係の悪化です。下院を押さえた民主党は、トランプ大統領のロシア疑惑追及を強めるでしょう。ロシア国内からは、民主党の勝利を不安視する声が出ています。

 とはいえ、7日の米国株は、民主党が大勝しなかったことへの安堵感で上昇したとも言えます。イベント通過で、不透明感が低下したことが好感されたというのが、一番の理由と考えられます。