1対10の株式併合との同時実施は実質的に何も変化なし?
そして、中には太平洋セメント(5233)やシャープ(6753)などのように売買単位を1,000株から100株に変更する一方で、10株を1株にする株式併合を同時に行うケースもあります。
太平洋セメント株の場合、変更前の株価が400円とすると、次のようになります。
<変更前>
株価:400円
売買単位:1,000株
最低必要投資額:400円×1,000株=40万円
<変更後>
株価:400円×10=4000円
売買単位:100株
最低必要投資額:4,000円×100株=40万円
このように、せっかく売買単位を1,000株から100株にしても、10株を1株にする株式併合が同時に行われると、投資に必要な金額は全く変わらなくなってしまいます。
変更対象の株をすでに保有している場合の影響は?
売買単位変更の対象となる株式をすでに現時点で保有している方は、変更により影響があるのではないかと心配しているかもしれません。でも、結論からすれば、変更前と変更後で、保有株の価値には変化はありませんので安心してください。
例えば、現在1,000株保有しているA社の株価が500円、売買単位を1,000株から100株に変更すると同時に5株を1株に併合というケースで考えてみましょう。
<現在>
株価:500円
保有株:1,000株
時価:500円×1,000株=50万円
<変更後>
株価:500円×5=2500円
保有株:1,000株÷5=200株
時価:2500円×200株=50万円
このように、現在と変更後とで、保有株は1,000株から200株に減ってしまいますが、保有株の価値は50万円のまま変わらないことが分かります。
株式併合をすると、その分株価が上昇します。理論的には5株を1株にする株式併合であれば株価は5倍、10株を1株にする株式併合なら株価は10倍になります。
ですから、株式併合により保有株数が減ったとしても心配は不要です。慌てて保有株を売却する必要はありません。
厳密に考えると影響はないとはいえないが…
ただ、厳密には株価に影響が全くないとはいえません。最低必要投資額が下がることで、次のようなことが投資家の心理状態や行動として起こり得るからです。
例えば、現在の株価600円、売買単位1,000株のB社が、売買単位を100株に変更すると同時に、5株を1株にする株式併合を実施するケースで考えてみます。
必要最低投資額は現在の600円×1,000株=60万円から、3,000円×100株=30万円となります。
すると、すでにB社株を保有している投資家と、B社株への投資を検討している投資家とで、次のような心理状態になるはずです。
<すでにB社株を1,000株保有している投資家の場合>
今までは1,000株売ると全部売ることになるから売りづらかったけど、これからは200株のうち半分の100株を売ることもできる!
<B社株の投資を検討している投資家の場合>
今までは投資するのに最低でも60万円必要だったから躊躇していたけど、これからは30万円で良くなるから、投資してみようかなあ……。
結局、売買単位変更により必要最低投資額が低下する株の株価がどう動くかは、既にその株を保有している投資家からの売りと、その株への投資を検討している投資家からの買いとの綱引きの結果によります。事前にどう動くかを予測するのは困難です。
株価が低い会社が株式併合をすると株価が下がりやすくなる?
また、株価が低く、業績があまりよくない銘柄が株式併合をすると、見た目の株価が上昇するため、心理的に空売りがしやすくなり、株価が下がる傾向があると筆者は感じます。
例えば株価100円、1,000株単位のC株が売買単位を100株に変更するとともに10株を1株に株式併合するケースで考えてみましょう。
株式併合により、100円だった株価が1,000円になります。業績が良くないので空売りを仕掛けようとする投資家は、株価が100円だと、「これ以上は下がりにくそうだ」と感じます。でも、1,000円の株価であれば、「まだまだ下がる余地はある」と空売りを実行しやすくなるのです。
とはいえ、具体的にどのような影響があるかを事前に予測することは極めて困難ですし、それほど神経質になるレベルの影響は生じないと思います。「こうなる可能性もある」と頭の片隅にとどめておく程度でよいのではないでしょうか。