8月に注目したい新興株の動き
先月まで月間で「6カ月連続」下落しているマザーズ指数。この時点で、マザーズ指数の算出開始(2003年)以降で初の現象が起きています。月間マイナスの不名誉な記録を、8月も「7カ月連続」に延ばすのでしょうか。月間での下落が連続しているというのは、まともなリバウンドが起きていないということ。まともなリバウンドが起きていないということは、マザーズの塩漬け株の損益がまともに改善していないということです。メインプレーヤーの個人投資家が、この長期下落トレンドで疲弊しています。投資家心理的には最悪ですので、「長く下げたからそろそろリバウンドする」なんて軽々しく言える状況ではないように思います。
そのマザーズ指数ですが、8月から指数が大きく変化しました(そもそもマザーズ指数のチャート分析などに意味はないですが、その確信を強めるような大きな変化)。それは、6月に上場したメルカリ(4385)が、7月末からマザーズ指数に入ったことです。時価総額6,000億円超の巨大新興株ですが、指数計算では浮動株比率をベースにした時価総額に計算し直されます。7月末に東証が公開したメルカリの浮動株調整時時価総額は2,555億円(7月30日終値ベース)。マザーズ指数に占めるウエイトは「11.6%」でした。これは、2位のサイバーダイン(7779)の同5.4%、3位のミクシィ(2121)の5.1%を大きく上回る高ウエイトになります(ちなみに、日経平均株価の高ウエイト株で知られるファーストリテイリングの日経平均ウエイトは7.9%です)。
指数の1割以上を占めるメルカリを含む8月と、メルカリが含まれていない7月までが同じ指数と言うには無理がある話。だからこそ、7月までは1,000ポイント割れでリバウンドしていたマザーズ指数が、8月以降も1,000ポイント割れでリバウンドすると言える根拠は何もないわけです。
そのほか、7月までの下落過程でこんな説が市場の中で出ていました。
「7月末からメルカリがマザーズ指数に入るため、機関投資家がメルカリを買う一方、他の銘柄を売却(リバランス)したためにマザーズが下げた」
これもあり得ません。マザーズ指数に連動した運用をする機関投資家はほぼ皆無です(日銀のETF買入れ対象にも入っていませんし、GPIF:年金積立金管理運用独立行政法人など年金も運用対象としていません)。今年2月に東証マザーズETF(2516)が上場し、ETFは1本あります。ETFの運用資産は28億円程度まで増えていますが、このETFのポートフォリオは「マザーズ指数先物ロング」だけで構築されています。そのため、メルカリを買う必要もなければ、他の銘柄を売る必要もありません。
マザーズ指数の大きな変化が、投資家の行動に影響を与えたわけではありません。指数計算のうえでの構成銘柄(中身)に大きな変化があっただけ。その変化はメルカリと特定できるため、8月のマザーズ指数にとっては「8月のどこでメルカリの株価が大きく動くか?」が重要となります。その意味で、最重要日は「8月10日(金)」。この日は、メルカリの上場後初の決算発表(しかも本決算)の8月9日(木)の翌日になります。
メルカリの前18年6月期は営業利益で25億円の赤字予想ですが、今期19年6月期のガイダンスはどうなるか?…先月レポートを書いた証券会社は6社。その6社の19年6月期の営業利益予想平均(コンセンサス)は「49.27億円」と黒字転換を予想しています。会社側のガイダンスで「営業黒字50億円」辺りが分岐点になりそう。メルカリの指数ウエイトを考えると、決算後にメルカリ株が10%動けば、マザーズ指数も1%以上動くことになります。また、このメルカリ決算発表予定の8月9日は、指数ウエイト3位のミクシィ、4位のSOSEI(4565)も第1四半期の決算発表を予定。この3社の決算通過で、マザーズ指数がアク抜け的な反応を示せるか?これが8月相場最大の関門になるのは間違いないでしょう。