損切り不要の「前提」が成立するかどうかがポイント

 このような反論をすると、次に出てくるのは、「それは銘柄選択が誤っているからだ。将来株価が上昇する銘柄を選べば問題ない」という論拠です。確かにそうかもしれないと思う方も少なくないかもしれません。

 しかし、筆者に言わせればそれは「理想論」にすぎません。確かに株価が長期間にわたって上昇を続けている銘柄も数多くあります。そうした銘柄を選ぶことができれば、買ってから株価が下がっても放置しておけば、やがて買い値を上回ることになるでしょう。

 でも問題は、本当に私たち個人投資家が「将来株価が上昇する銘柄を選ぶことができるかどうか」です。

 実際私たちは、「将来株価が上昇する」と思って株を買っているわけです。ところが現実は、株価が下落して塩漬け状態になって手も足も出ない人が多数存在します。

 個人投資家がプロ投資家のように銘柄選択の精度を高めることができるならば別ですが、残念ながらそれは非常に難しいでしょう。「将来株価が上昇する銘柄を選べば損切りは不要」というのは、長年株式投資を実践している筆者からすれば、実現不可能な絵空事にすぎないのです。

 

ナンピン買いによる損切り回避は「論外」

 また、損切りを避けるためにナンピン買いを推奨する人もいます。これは非常に危険な考え方です。

 安易にナンピン買いをするという行為は、株式投資を甘く見ているとしか言いようがありません。確かにナンピン買いが成功すれば、それをしないよりも小幅な反発で損益をプラスマイナスゼロまで持っていき、損失を回避することができます。でもそれは、「成功すれば」の話です。

 業績や相場環境が悪化すれば、株価が3分の1、5分の1、10分の1以下に下落する場合もあるのです。ナンピン買いを何度しても株価が下落して含み損が拡大し続ける「ナンピン地獄」です。こうなれば、塩漬け株が増える一方です。そのうち投資資金も枯渇して、何もできなくなります。

 筆者は「ナンピン買いを繰り返して含み損が膨らみ、どうしてよいか分からない」という悩みを数多くの個人投資家から聞いています。ナンピン買いせずに損切りしていれば、その悩みは全て解決していたはずなのに、非常に残念なことです。

 

損切りすれば利益の拡大につながる

 いかがでしょうか。「損切り不要」論が理想の空論に近いものであることが、お分かりいただけましたでしょうか。

 損切りをした後も株価の下落が続ければ、下落が止まるまで手を出さなければ損失は拡大しません。逆に損切り後株価が上昇に転じれば、買い直せばよいだけです。こんな単純なことなのに、なぜほとんどの個人投資家ができないのか、不思議でなりません。

 そもそも、損切りせずに保有を続けたり、ナンピン買いを続けたりするのは、資金効率の面からみれば最悪の選択です。なぜなら、株価が弱い銘柄を持ち続けることになるからです。

 そうではなく、株価が値下がりした弱い銘柄はさっさと損切りして、上昇トレンドにある強い銘柄に乗り換えて、株価上昇の恩恵を受けるべきなのです。それが、長い目で見れば利益の拡大につながるからです。