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EV・自動運転が次世代車本命に 日本車に逆風(窪田)
窪田 真之
3分でわかる!今日の投資戦略〔平日毎朝8時掲載〕
楽天証券経済研究所の窪田真之と香川 睦が、日本株市場の分析と投資戦略をレポートします。 ともに元ファンドマネージャーであり、国内外のマーケット動向に精通。運用者、分析者としての幅…

EV・自動運転が次世代車本命に 日本車に逆風(窪田)

2017/8/1
・米国10州でZEV規制強化。EVに追い風だが、HEVに逆風・・・
・中国やインド、欧州でもEV重視の流れ。EVが次世代車の本命に
・自動運転の注目が高まっていることも、EV優位に働く
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執筆:窪田真之

今日のポイント

  • 次世代エコカーとしてEV(電気自動車)を本命と考える国が増えている。電池性能の向上が、EVの魅力を高めた。自動運転の開発熱が高まっていることもEVに追い風。
  • HEV(ハイブリッド車)を本命として取り組んできた日本の自動車産業にEVブームは逆風。内燃機関が不要となるEVが拡大すると、日本の自動車産業は構造転換を迫られる。

米国10州でZEV規制強化。EVに追い風だが、HEVに逆風・・・

米国カリフォルニア州など10州で、2018年モデルイヤー(2017年夏開始)からZEV(ゼロ・エミッション・ビークル=排ガスをまったく出さないか少ししか出さない車)規制が強化されます。ZEV規制は、一定台数(2012年時点では7万台)以上の販売を行う自動車メーカーに対して、ZEVの販売比率を一定比率以上にすることを義務付けるものです。
2017年モデルイヤーまでは、HEV(ハイブリッド車)や低燃費ガソリン車までZEVの範囲に含まれていましたが、2018年モデルイヤーからHEVと低燃費車が除かれ、EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、燃料電池車、水素エンジン車の4種類だけがZEVとして認められることになります。
新規制が始まる2018年モデルイヤーでは、ZEV販売比率を4.5%以上にすることが求められます。達成できないメーカーは、罰金を払うか、超過達成するメーカー(テスラなど)からCO2排出権を買う必要が生じます。
この規制強化は、事実上、HEV(ハイブリッド車)を狙い打ちにしたものともいえます。カリフォルニア州ではトヨタのプリウスが人気でしたが、今後、カリフォルニアで販売する自動車メーカーは、EVとPHVに販売をシフトしていかざるを得なくなります。
米国というと、トランプ大統領が、「自動車の環境規制を廃止し、石炭産業の雇用を取り戻す」と宣言し、さらに、「パリ協定(CO2排出削減のための国際協定)からの離脱」を表明して驚かれたのが記憶に新しいところです。
しかし、カリフォルニア州など環境意識の高い州では、大統領の方針と関係なく環境規制を強めていく方針です。カリフォルニア州は、雨が少なく光化学スモッグが発生しやすい環境であるため、早くから環境規制の取り組みに積極的でした。トランプ大統領が環境規制撤廃の話をしたときに、一部冗談で、「カリフォルニア州は米国から離脱(独立)宣言するのでは」と言われたほどです。

中国やインド、欧州でもEV重視の流れ。EVが次世代車の本命に

大気汚染が深刻な中国やインドでも、環境規制を強化してEVの普及を促進する動きがあります。中国政府は2013年からEV、PHVなどの新エネルギー車に対して補助金を出して普及を後押ししています。
インドは、2030年までに新車販売をすべてEVにするという野心的な計画を発表しました。これを実現するために、まず物品サービス税でEVを優遇することを始めています。
欧州でも、同様の動きがあります。フランスとイギリスが、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売をやめる方針を示しました。
次世代環境車の候補として、これまで、EV、HEV、クリーンディーゼル車が競ってきましたが、今、EVが圧倒的優位に立ちつつあります。クリーンディーゼル車は欧州メーカーを中心に開発が進められてきましたが、ドイツのフォルクスワーゲンなどでディーゼル車の廃ガステスト不正が明らかになってから、環境車とは認められなくなりました。
EVとHEVの競争では、一時、HEVが優位に立ちました。3年前までEVは航続距離(1回の充電で走ることができる距離)が100ー200キロしかなく、社会インフラ(充電ステーション)も整っていないことから、本格普及は難しいと考えられていました。
ところが、この3年で自動車用電池の性能(蓄電量・劣化せずに充放電を繰り返す回数)が大幅に向上。その結果、最先端のEVの航続距離が300-500キロまで延び、ガソリン車と遜色なくなってきました。まだ、社会インフラ(水素ステーション)の整備は進んでいませんが、それでも、EVが本格普及する条件が整いつつあります。
自動車用電池の性能向上は、プリウスなどHEVの性能向上にも大いに寄与しています。HEVも、とても魅力的な低燃費車となり、日本では高い人気を集めています。
ところが、HEVは主要技術をトヨタなど日本メーカーが独占的に保有していることが、海外での普及を妨げる要因となっています。米国や中国は、日本が支配するHEVを次世代カーとして本格的に普及させたくはないようです。
EVの性能向上を受けて、中国はEVを次世代車の中核に据える方針に転換しており、多数の地場メーカーがEV製造に参入しています。

自動運転の注目が高まっていることも、EV優位に働く

欧米および日本で自動運転の開発熱が高まってきたことも、EV普及を押し進める要因となっています。自動運転が主流になると、自動車はセンサーやモーターなどの装着率が上がり、電子機器に近づいていくからです。
EVの本格普及は、電池、モーター、半導体、センサーなどを製造する電機・電子部品産業にとって大きなチャンスとなります。一方で、既存の自動車産業を危機にさらす可能性があります。自動車が、輸送用機械から、電気機器に近づいていくからです。そうなると、日本の自動車産業が持つ、内燃機関を作るための幅広い産業基盤が不要になります。
トヨタ、ホンダなど日本の自動車メーカーは、これまでHEVの開発に熱心でしたが、EVの開発にはあまり積極的ではありませんでした。日本メーカーでは、日産自動車と三菱自動車のみがEV開発に積極的でした。
HEVは、ガソリンエンジンも使うので、既存の内燃機関を製造するインフラを活用できます。ところが、EVは、内燃機関を必要としないので、既存のインフラが不要になる問題があります。それが、日本の自動車メーカーがEV開発に及び腰であった背景と考えられます。ただし、今や、世界中が、EVを中心に普及を進める方針に転じてきていることから、日本メーカーも、ようやくEV・自動運転の開発に本腰を入れ始めました。
ただし、自動運転では、日本メーカーは出遅れています。米国では、グーグルなどが、交通事故を減らしドライバー不足を解消するために、自動運転の開発に取り組んでいます。

日本の大手自動車メーカーの業績動向

米国の自動車販売が減少に転じていることが、日本の自動車メーカーにとって逆風です。前期、円高で苦しんだトヨタ自動車は、今期は米国販売の減少に苦しみます。前年に比べて、円安が進んでいることは利益の押し上げ要因となりますが、稼ぎ頭の米国が不振なので利益の低迷が続く見込みです。
これから始まる4-6月決算の発表では、米国不振が大きなマイナス要因となる見込みです。会社予想の前提(1ドル105円前後)よりも為替が円安にあることはプラス要因となります。今期業績を減益で予想している会社が多いものの、市場予想(アナリスト予想平均)で見ると、円安効果で、減益率が縮小、あるいは増益へ転換する可能性があります。

自動車大手の連結経常利益、前期実績と今期予想

コード 銘柄名 前期実績 前期比 今期会社予想 前期比

今期市場予想

前期比
7203 トヨタ自動車 21,938 -26.5% 18,000 -18.0% 21,935 0.0%
7267 本田技研工業 10,070 58.5% 8,750 -13.1% 9,657 -4.1%
7201 日産自動車 8,647 0.3% ―― ―― 8,765 1.4%
7270 SUBARU 3,943 -31.7% 4,100 4.0% 4,467 13.3%
7269 スズキ 2,867 37.1% 2,550 -11.1% 3,049 6.3%

(単位:億円)出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成、前期は2017年3月期、今期は2018年3月期

それでは、こうした環境下、自動車株の投資判断はどう考えたらよいでしょうか?は明日、私の考えを述べます。

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