2.イオン(8267

 投資妙味あり。ポイントは以下3つ。

(1)業績は中長期的に拡大へ

 7月4日に2019年2月期1Q決算を公表。1Q連結業績は営業利益が同8%増となり1Qとして最高益を更新しました。通期の営業利益は2期連続で最高益を更新する見込みです。会社側は2019年2月期の営業利益を前期比14%増とみています。

 1Qの営業増益に大きく寄与した事業は海外の総合金融や国際事業でした。海外の総合金融ではクレジットカードが好調だったほか、個人向けのローンの審査をより高度に進めてきた結果、貸し倒れリスクを改善することができました。国際事業では、マレーシアやベトナムが堅調に推移しました。

 注目すべきは、これまで足かせと見られていたSM事業(スーパーマーケット)、GMS事業(総合スーパー)も増益となったことです。GMSはまだ赤字ですが、赤字幅が縮小しました。SMやGMSにとって1Qは天候に恵まれず厳しい外部環境でしたが、生産性の向上に取り組んできた結果、利益ベースでは健闘しました。

 中長期的にも、収益柱の総合金融が牽引しながら、国内のSM事業やGMS事業の回復が業績拡大に寄与するとみられます。

イオンの連結業績

単位:百万円
出所:会社資料より楽天証券作成

 

(2)構造改革に注目

 中長期的な観点からはイオンの構造改革に注目です。詳細については以下のレポートで述べています(5月31日「優待だけじゃない!イオン、ヤオコー、ベルク…スーパーストア業界に変化の兆し」)。

 イオンは今後、SMとGMSの食品部門の統合やECマーケットプレイスの運営を進めていきます。これが軌道に乗れば、仕入れの集約化による粗利益率の向上や、ネットを軸とした新しい需要の創出が期待できます。

 

(3)直近、株価は下落

 決算公表後の株価はほぼ横ばいですが、直近のピーク(6月13日)からは約8%下落しています(7月9日の終値と6月13日の終値を比較)。

年初を100とした場合の株価推移
期間:2018年1月4日~2018年7月9日

出所:楽天証券作成

 

(4)リスクは特別損失がしばらく続くこと

 営業利益は最高益を更新する見込みですが、当期純利益の回復はしばらく見込めないでしょう。人員整理を背景にした特別損失が発生するとみられるためです。

 

3.ニトリHD(9843

 投資妙味あり。ポイントは以下3つ。

(1)アジアでの売上拡大が次の成長の柱に

 6月28日に2019年2月期1Q決算を公表。1Q連結経常利益は18%増となり市場予想を上回る好調な着地でした。通期では32期連続で経常最高益を更新する見通しです。会社側は2019年2月期の営業利益を前期比6%増と計画しています。

 中長期的には中国などアジアで売上げを拡大させることによって、業績は拡大していくでしょう。家具の「ニトリ」は値ごろ感とデザイン性を兼ね備えており、そのため日本の中間所得者層の需要を掴みましたが、それが中国でも起こりそうです。実際、同社の中国のネット通販では、まだ店舗がない地域からの注文も多いようです。中国の店舗数はまだ25店舗(2019年2月期1Q末時点)ですが、通期末には44店舗まで拡大する見通しです。

ニトリHDの連結業績

単位:百万円
​出所:会社資料より楽天証券作成

 

(2)高い収益性、強いSPAモデル

 同社の強みは高い収益性にあり、営業利益率は16%台(2018年2月期)に上ります。企画・デザインから製造、販売まで一気通貫するSPAモデル(製造小売業モデル)をインテリアの分野で築いており、これが高い収益性につながっています。インテリアの企画から携わることによって、消費者の求めるデザイン性の高い家具を開発できるほか、それらを店舗で効果的に展示することによって、消費者にその商品の良さをしっかりとアピールすることができます。店舗で得られた売れ行きデータを、次の商品開発に活かすこともできます。

 今後は、インテリアを軸にしつつ、コーディネート提案や屋内空間のデザインといった事業が広がっていくとみられます。同社は家のトータルコーディネイト提案を推進しようとしており、「素敵な部屋で暮らしたいけれど、どうしたらいいのか分からない」人々を対象にした相談会を実施するといった取り組みを実施しています。

 

(3)直近、株価は下落

 1Qの決算公表後、株価は約8%下落しました(7月9日の終値と6月28日の終値を比較)。7月2日に公表した6月の既存店売上高が前年同月比4.5%減となったことも嫌気されました。しかし、既存店が落ち込んだ理由は、悪天候や、日曜日が1日少なかったためです。日曜日が1日少ないだけで約4ポイントのマイナスとなります。それを除けば、既存店の売上高はほぼ横ばいでした。

年初を100とした場合の株価推移
期間:2018年1月4日~2018年7月9日

出所:楽天証券作成

ニトリの既存店売上高(前年同月比)推移
期間:2017年3月~2018年6月

出所:会社資料より楽天証券作成

 

(4)リスクは天候の悪化と、競争環境の激化

 天候の悪化が続けば既存店売上高に悪影響を及ぼします。また、インテリア業界では規模が小さくともセンスの良い家具を販売している企業が多数あります。こうした企業が価格を抑えて商品を開発できるようになれば、同社の既存客を奪う可能性があります。