3.5Gの応用分野

 5Gの応用分野は、まずスマートフォンとタブレットPCです。大容量高速通信がダウンロードのみならずアップロードでも使えるため、SNSで動画を頻繁にアップする人たち、スマホやタブレットで動画配信サービスをよく使う人たちなど、動画のヘビーユーザーにとって5Gは利便性が高いものになると思われます。

 特に、エンタテインメントは5Gの大きな応用分野です。映画、ドラマのストリーミングサービスや、リアルタイム性を強めたオンラインゲーム、それも4K画像を使った多人数VR型オンラインゲームなどに向くと思われます。

 次に、大容量高速動画通信と低遅延を応用した、ロボットや機械の遠隔制御、遠隔操作のような産業での応用、遠隔地からのロボット手術や診断など医療での応用が考えられます。

 前述したように同時多接続を応用したIoTの分野でも応用できます。この分野での応用は幅が広く、今後様々な用途開発が行われると思われます。例えば、コネクテッドカーや自動運転で5Gは重要になります。

 

4.5G関連銘柄

 表2は、5G関連銘柄のリストです。

 5Gには、NTTドコモ、KDDIなどの移動体通信事業者、富士通、NECのような基地局や通信設備のメーカー、サイバーコム、アルファシステムズのような基地局や通信設備に搭載するソフトウェアの開発会社、コムシスホールディングスのような基地局の設置業者が必要になります。

 日本では、初期の5Gは地域限定型で設備は4Gと共用部分が多くなると思われます。ただし、5Gは周波数が高く光のような性質の指向性の強い電波を使うため、全国に本格展開されるようになると、小型基地局が大量に必要になります。そのため、基地局メーカー、通信用ソフトウェア会社、工事業者への恩恵が大きくなると予想されます。

 また、5Gは大容量の動画等の情報を大量にやり取りするため、既存の通信ネットワークを大幅に強化する必要があります。そのため、光ファイバー、光通信機器のメーカーである古河電気工業、住友電気工業、ネットワークを構築するネットワークインテグレーターである伊藤忠テクノソリューションズ、ネットワンシステムズ、5G用通信機器、通信端末の計測機器のメーカーであるアンリツ(端末の計測機器)、アルチザネットワークス(基地局の計測機器)なども関連銘柄になります。

 このほか、村田製作所、TDKなどの電子部品会社、ローム、東京エレクトロンなどの半導体関連会社が重要になりますが、これについては次の項で述べます。

表2 5G関連銘柄

出所:楽天証券作成

 

5.5Gと電子部品

 5Gは、基地局でも端末(スマホなど)でも、周波数が高く光の性質に近いミリ波、センチ波を使うため、アンテナ系に特殊な技術が必要になります。「ビームフォーミング」がそれで、基地局から電波を照射するときに、相手(端末)の位置を特定して、その方向に高指向性の電波を照射し、端末側で電波を受信し易くします。端末から送信する時にも端末側にこの技術が必要になります。そのため、基地局、端末ともにアンテナ周りの電子部品の高度化が必要になります。

 また、コンデンサ(電圧制御を行う)、SAWフィルタ(電波のノイズを減らす)などの通信機器に多用される電子部品の搭載個数が4Gよりも多くなると思われます。表3のように、スマホが高度化するにつれ搭載される電子部品の数は増えてきましたが、5Gでもこの傾向が続くと思われます。

 この分野では村田製作所がチップ積層セラミックコンデンサ、SAWフィルタ、アンテナ系部品、樹脂多層基板「メトロサーク」などで高いシェアを持っています。例えば「メトロサーク」は極薄で曲げやすいだけでなく、5Gに対応して高周波特性のよい(雑音が発生しにくい)基板です。

表3 スマートフォンに搭載される電子部品の個数

出所:村田製作所資料より楽天証券作成
注:ハイエンドは、マルチキャリア、LTE-Advances(キャリアアグリゲーション)、ミッドレンジはマルチキャリア、LTE、ローエンドはシングルキャリア、LTE