iDeCo加入申込書があなたの運用成績を決める?

2017年1月から、現役世代の誰もが利用できるようになるiDeCo(個人型確定拠出年金)ですが、ちょうど今、加入申込キットを取り寄せて検討している人もたくさんいると思います。

このとき、加入者資格の確認のために会社に書類提出(押印をしてもらう)するのも面倒な作業ですが、掛金額の設定と運用指図の決定が負担と感じている人も多いと思います。適当に書いて書類を出してしまおうかと思ったり、あるいはこれが原因でなかなか書類が出せなかったりします。

このとき、「なんとなく投資」から次のステップを目指す本連載としてちょっとアドバイスしておきたいことがひとつあります。

それは「なんとなく加入申込時点で運用指図をしたらそれがあなたの運用成績をほぼ決定付けてしまう」ということです。

一度決めた資産配分をほとんどの人はそのまま数年放置する

私はかつて企業型確定拠出年金の加入者動向調査を担当したことがありますが、いくつかの「非合理的投資行動」というものを目の当たりにしてきました。

考えてみれば企業型確定拠出年金利用者というのは「普通の会社員」なので、熱心な個人投資家と比べれば非合理的になるのは当然なのですが、「最初に決めた資産配分」にずっと縛られてしまう人があまりにも多いのです。

まず、「最初の資産配分から数年たっても変えないままの人が多い」ということです。面倒だったり無関心だったり、理由はさまざまですが、どんな資産配分であっても数年ほど何もしない人のほうが多数派です。

投資教育を受けたとしても資産配分が変わる可能性より、何もしない可能性のほうが圧倒的で、実行を促すことは困難なことだ、というのが企業の研修担当者の意見の一致するところです。

次に、「資産配分を変更するとしても、ゼロベースで再検討するのではなく、『今の投資比率プラスマイナス〇%』で考える」ということです。たとえば今、投資比率30%の人がいたとして、より積極的に投資をしようと考えたとします。しかし、いきなり70%にすることはまれで、現在の投資比率30%プラス10~20%というように考えてしまいます。これは投資比率が20%の人も50%の人も75%の人も同じ傾向が出ています。

これは行動ファイナンスでも現状維持バイアスとして指摘されている非合理的投資行動のひとつです。「今」を判断基準にしてしまうという呪縛はきわめて強いのです。

今後増大するであろうiDeCo加入者は、企業型の確定拠出年金利用者と比べれば、自己決定により制度加入を選択している分、比較的意識が高い行動をとるかもしれません。しかし「最初の投資比率」について意識しておくことは変わらない課題だと思います。

最初に決めるべきもっとも重要な事項は「投資割合」

約600万人いる企業型確定拠出年金の先例に学ぶことがあるとすれば、「なんとなく運用指図」がよくないということです。むしろ「最初の運用指図に力点を置く」ということが重要です。

アセットアロケーション的にいっても資産配分がパフォーマンスの9割を決定付けるわけですが、その後何年もの資産配分を決定付ける可能性がある「初期設定」になってしまうとすれば、iDeCoの申込用紙こそがまさにその決定要因になるわけです。

しっかり悩んでほしいのは「投資比率」です。NISAであれば「入金、即、リスク投資」でしたがiDeCoでは、掛金の一部ないし全部について定期預金等(元本確保型商品)に振り向けることができます。

このとき、超超低金利というものの、元本割れしないことと「とりあえず安全資産にしておこうか」という気持ちが動くことで、元本確保型商品の割合が高くなってしまったりします。そしてその「とりあえず」の配分割合がその後何年も放置される可能性はかなり高くなります。

もし悩むくらいなら、投資比率を高めに設定してスタートしておくことをオススメします。最低でも6割、できれば8割以上を考えてみるほうが、投資比率2割でスタートするよりずっといいはずです。

(8割の投資比率を2割に下げることはいつでもできますから、なおさらスタートを高め設定にしておいた方がいいでしょう)。

できれば少し勇気を出して高めの投資比率でスタートしてみたい

iDeCoに新しく加入した人は「ゼロからの積み立て開始」に必ずなります。公務員のように月1.2万円の積み立て上限の場合、1年後の資産額は14.4万円程度です。個人の財産全体を考えればこれはごく一部にすぎないはずです。

だとすればなおさら、iDeCoの資産配分は高めでスタートしていいと思います。

仮に投資比率の違いが、運用利回り年0.01%と年4.00%の違いになったとして、やっぱり資産配分の変更は行われないままだったとしたら、先ほどの月1.2万円も最終的には539万円と1,260万円という圧倒的な金額差に開きます(22歳から60歳まで38年積み立て。月200円の管理手数料を控除)。

平均的な期待リターンが高くなるほうに投資選択をし、そのままほったらかしにしてしまった方が高い資産額になるということです。

細かい資産配分に悩んだ場合は、信託報酬の低いバランス型ファンドに投資資金を全額振り向けるだけでも十分な効果が出ます(ほったらかすなら、そのほうがリバランスだけは代行してもらえてベターといえる。ただし信託報酬が低いものを選好すること)。

とにかく「最初の投資比率」を高めに設定してみることが、iDeCoで資産形成を成功させるカギになるはずです。これから申込書を記入する人は参考にしてみてください。